上京中の玉城デニー沖縄県知事が、12日に安倍晋三首相、菅義偉官房長官と官邸で会談する。就任から9日で政府首脳との対面が実現することとなり、初会談まで4カ月を要した翁長雄志前知事と比べて政府の対応の早さが際立っている。県による埋め立て承認の撤回に対する法的措置も棚上げするなど国が慎重な対応を続ける背景には、8万票の大差で当選した玉城氏との早期の対決を避けて丁寧に対応する姿勢をアピールする狙いが浮かぶ。
玉城知事と政府首脳の面会を巡っては、知事選翌日の今月1日に菅官房長官が「日程が合えばお会いしたい。時期はこだわらない」と語るなど、新知事の求めに応じて早い時期に実施する構えを見せていた。
だが、自民党県連の一部からは豊見城、那覇市長選に影響することを懸念し、玉城氏と政府幹部の会談に慎重な声があった。
早期の会談実現について自民党国会議員は、政権与党が総力戦で臨んだ知事選で玉城氏が「想定外の大差」で当選した影響を指摘する。「内閣改造後の支持率改善も芳しくない。県知事選を制した野党が攻勢をかけることが想定される中、新知事の扱いをむげにはできない」と話した。
一方、県内の自民党関係者は「長年一緒だった自民党を裏切って知事になった翁長氏と比べれば、玉城氏への恨みは小さい」と、党側の心情を解説した。
11日に面会した二階俊博自民党幹事長に新基地建設反対の意思を伝えたという玉城知事は、安倍首相との面会についても「県民の総意として辺野古の新基地建設には反対だという結果が私の当選と票差の結果になっていることは承知のことと思う。それを踏まえた対話になるだろう」と述べ、選挙結果を背景に政権中枢との直接対話に臨む姿勢を強調した。
だが、早期の会談が実現しても辺野古移設が「唯一の解決策」とする政府との間には深い溝が横たわる。安倍政権の閣僚経験者は「接点は簡単に見つからない。まずはあいさつからだ」と語り、今後の出方を探りながらの駆け引きが始まるとも見立てを示した。(知念征尚)