夜間中での授業をまとめた「めんそーれ!化学 おばあと学んだ理科授業」を出版した沖縄大学の盛口満教授=那覇市の同大

 

理科を学んだことがない生徒と、実験室もない中学で化学を学ぶ―。夜間中学を舞台に、そんな授業の様子を記録した書籍「めんそーれ! 化学 おばあと学んだ理科授業」を沖縄大学の盛口満教授が岩波ジュニア新書から発行した。生徒の体験をもとに組み立てた授業は、生徒の生き生きとした発言や、ふに落ちたときの「ああ!」があふれ、学びの原点が見える。

 

盛口さんは2005年から11年まで、那覇市の珊瑚舎スコーレ夜間中学で理科を担当した。生徒は戦中戦後の混乱で学校に行けなかったお年寄りたち。専門が生物で「化学は専門外」という盛口さんは模索しながら、関心や知識などお年寄りたちの「現実」を原点に据える授業を続けた。

 

電化製品のボタン一つで生活できる現在と異なり、お年寄りたちは戦後の厳しい状況下で、工夫を凝らしていろんな物を手作りし、物ととことん向き合って生活してきた。授業でも関連する話題で水を向けると、厳しくも豊かな経験談があふれ出して「宝箱のよう」(盛口さん)。

 

戦後の収容所でマラリア患者に布団を縫うために、コンビーフの缶を開ける金具をたたいて細く伸ばして針にした経験は、金属はたたくと延びるという性質を、海水で豆腐を固めた経験はイオンの働きを利用したものだ。経験を理論で意味づけされると「ああ!そういうことか」と納得が生まれる。書籍には、授業でのそんなやりとりが詰まっている。

 

現在も珊瑚舎の夜間中は「ああ!」があふれ、通う人は「こんなに面白いのに、もっとたくさんの人に来てほしい」と惜しがる。盛口さんは「お年寄りは学ぶことを楽しみ、学ぶことで違う世界が見えることを喜んでいる。中高生や教員にも多様な授業のあり方や学び方を知ってほしい」と話した。

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