2月28日の午前10時半、都内のホテルロビーから羽生結弦(23)が姿を見せた。かたわらには、母・由美さんの姿も。最後は、スタッフ総出でのお見送りとなった。「ありがとうございました!」と語った羽生。この日も王者は笑顔だった――。
男子フィギュアで66年ぶりの五輪連覇を成し遂げた羽生。26日に凱旋帰国すると、翌27日には午前中から帰国報告会に出席。文部科学省、スポーツ庁、外国人特派員協会、日本人記者クラブ、ANA本社へ移動するなど大忙しだった。3月2日には国民栄誉賞を授与する方向で最終調整に入ったことが報じられるなど、誰もが王者をほめたたえた。
そんななか注目されているのが、羽生のこれから。羽生は「4回転アクセルに挑戦したい」と語っているが、右足首の状態は思わしくない様子。27日には、当面は治療に専念すると明かしていた。3月19日からは世界選手権が行われるが、出場回避を示唆する報道も……。
「治療とかリハビリとか基礎は辛い。ただそういった辛い時期、苦しい時期を乗り越えて、次のことに向かって、前に進んでいけたら」
だが彼は早くも前に進み始めていた。ホテルを後にした羽生が向かった先は、都内の病院だった。都内にはナショナルトレーニングセンターがあるが、なぜこの病院を訪れたのか。
「スポーツ医療の分野が充実していることで有名なんです。各分野のエキスパートが集まっていて“細分化された治療”を受けることができます。羽生さんはA医師を頼ったそうです。海外キャリアもある敏腕医師で、スポーツ医療に造詣が深い方。仙台の病院でも役職についていたことがあるので、以前から交流があったのかもしれません」(医療関係者)
訪れたのは、午前の一般診療が終了した正午すぎ。院内にはまだ患者が残っていたが、羽生の姿に気づく人はいなかった。それもそのはず、羽生から“オーラ”が完全に消えていたのだ。そこにいたのは年相応の、どこにでもいる“普通の青年”のようだった……。
「羽生さんは今回、患部周辺の精密検査を行ったそうです。その後、今後のリハビリスケジュールなどを話し合っていたそうです。その話し合いのなかで、羽生さんは『可能ならば、やっぱり世界選手権に出場したい!』と訴えたそうです」(前出・医療関係者)
会見では終始、笑顔で振る舞っていた羽生。だがその胸の内ではやはり、けがへの不安を抱えていたのだ。医師との話し合いは、実に3時間にも及んでいた――。