(写真・琉球新報社)
沖縄の手仕事の新たな魅力を創造する「D&DEPARTMENT OKINAWA」プロデューサーの真喜志奈美さん(51)。天然素材の服飾を作るブランド「ヨーガンレール」本店の室内デザインを手掛けるなど空間デザイナーの顔も持つ。「沖縄産とうたわなくても、高品質で新鮮な感覚を併せ持つ商品を作家さんたちと一緒に作りたい」と夢を語る真喜志さんに情熱の源を聞いた。
―「D&DEPARTMENT(D&D)」では、手仕事による生活雑貨の販売に加え、商品開発も手掛けている。運営で大切にしていることは。
「沖縄の人が日常的に使う物を観光客が買って帰る店にしたいと始めたが、沖縄で製造される日用品が少なかった。そこで作家たちとの付き合いから始め、新しい物づくりへ動いている。その一つが首里織のハンカチだ。3人の作家さんにハンカチを提案した。感触が良くて、吸水性に優れている。一枚一枚仕上がりも異なる。丈夫で夢のある商品ができた。伝統的な素材や技術を使いながらも、びっくりするような新しい感覚の作品を生み出したい。どんなふうに新鮮な形で生活に溶け込んでいくのかにも興味がある」
―デザイナーのナガオカケンメイさんが「ロングライフデザイン」を提唱し、全国各地の賛同者と「D&D」をつくっている。何に共感したのか。
「ナガオカさんは長く愛されるロングライフデザインを広める運動に取り組んでいる。誰の作品かよりもデザインの良さを大切にする。名も無い人が作った民芸の作品を美しいと思い、リサイクルに興味がある。ナガオカさんとはデザインの考え方が似ていて、夢の一こまを応援したいと考え関わり始めた」
―最近はどのような商品を開発したか。
「角萬漆器」と「mina perhonen」デザイナーの皆川明さんが、新たな漆器を共同開発した。ナガオカさんが角萬漆器に対して新たな(商品の)形を考え、皆川さんのデザインを乗せようという提案をした。皆川さんからは螺鈿(らでん)の切れ端をマグカップなどにランダムにちりばめようというアイデアがあり形にした。日常使いのできるデザインになった」
—デザインの道に進んだのはなぜか。
「父親が画家で、母親は墨染織作家。芸術を見る目を養える環境はあったと思う。両親と違う方向に進みたいとデザイナーを志し、大学で工業デザインを専攻し、ドイツの大学院で彫刻を学んだ。最終的にプロダクトデザインと空間デザインにたどり着いた。鍵入れから器、家具、空間など幅広い分野を手掛けている。華美な装飾はせずに適正な価格、整理された間取りを大切にしている」
―沖縄に拠点を移したきっかけは。
「沖縄戦中にひめゆり学徒の引率教員だった仲宗根政善が祖父だ。大学時代に祖父から『生まれた場所の仕事をすることが本当に意味のあることだ』という言葉を掛けられた。心の中に引っ掛かっていたし、両親の晩年は一緒に過ごしたかった」
―今後の夢は。
「さまざまな人と協力して、広くてセンスのいいギャラリーなど会話や空間を楽しめるサロンのような場を沖縄に一つでも多くつくりたい。時間を共有したり、展示会の後に打ち上げしたりと、制作過程も楽しい。異なる業種の人が協力すれば、沖縄文化の質が上がると思う。その一員になれたらと願っていますね」
文・高江洲洋子
写真・又吉康秀
~ プロフィル ~
まきし・なみ 1966年生まれ、那覇市出身。父親は画家の故真喜志勉さん、母親は墨染織作家の民子さん。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科卒業。ベルリン国立芸術大学大学院彫刻科での学生生活、ソウルでのデザイン事務所勤務や事務所設立を経て、2003年に帰国した。ヨーガンレールやstarnetなどの空間デザインを担当。主なプロダクトデザインは革製品のEVELOPEシリーズ、LAUAN SHELVES。「D&DEPARTMENT OKINAWA」設立に参加し、沖縄の生産者と共同開発を進めている。