「日本航空(JAL)が9月19日の朝、2年7カ月ぶりに東京証券取引所第1部に株式を再上場しました。取引開始直後に売出し価格を20円上回る3千810円。時価総額が6千900億円と、ライバルのANAの6千900億円を抜いて世界の航空大手の中でも屈指の規模になりました」

そう話すのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。史上まれに見る大規模な今回の再上場だが祝福の声ばかりではなかった。株が紙切れになった前の株主や、リストラされ職を失った人々のやりきれない思い。そして、税金が使われた国民一人ひとりの怒りは当然としながらも、荻原さんはつぎのように解説する。

「見方を変えれば、JALがV字回復してくれなければこの国の経済にとって困ることも確かなのです。この再起がなければ、企業再生支援機構から投入された3千500億円の出資は未回収に終わるはずでした。機構は保有する株を売却し、6千483億円を回収できる見込みです。税金による損失穴埋め分以上に取り戻せることになったのです」

ただし、JALがこれで順風満帆にうまくいくとはとても思えないと荻原さんはいう。今回はご祝儀相場で高値をつけたが、それで安泰だと思ったら大間違い。改革を引っ張った稲盛和夫氏の退任も決まり、今後の経営はそんなに甘くはないというのが荻原さんの見解だ。

「いまはANAだけがライバルではなく、格安航空会社のローコストキャリア(LCC)があり、JALも参入していますが、価格競争はこれからさらに厳しくなることが予想されます。また、国内に100ある空港はどう考えても多すぎます。不採算路線を今後どうするか、利用する人はいるのだから、収益性のある路線に転換させていけるかどうかもカギになります。国民の税金が投入された分、利用者にとって満足のいくサービスを提供できる会社として再起していくことが望ましいと思います」

経済ジャーナリスト
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