NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』の人気の秘密は、続々登場するおいしそうな料理。大阪編では、西門家の台所を任されため以子が、大阪料理を習得しようと奮闘中だ。そこで今回、大阪料理指導を担当する広里貴子さんに、どのように西門家の献立が生まれたのか、アイデアのもとを聞きました。
「最初にプロデューサーから『日常食を取り上げたい』とお話があったので、撮影前の準備段階では、おもに地元のお年寄りの方々への聞取り調査を行いました。実際、昔からずっと食べられてきた郷土料理や調理法を聞くことが、今回の時代の料理を再現するために一番の方法だと思ったんです。文献は『聞き書 大阪の食事』(農山漁村文化協会)や、『大阪食文化大全』(西日本出版社)を参考にしました」
もともと広里さんご自身、大阪の伝統野菜をPRするために起業。日ごろから生産者や、各地方の婦人会の方々と交流が深かったことも、食材の仕入れをはじめ、献立や調理法の提案に役立ったという。
「正蔵さん(近藤正臣)が作った『おから入りの半助鍋』は、『半助豆腐』をもとに、豆腐をおからに、ねぎの代わりに摘み草にして正蔵さんらしくアレンジ。半助(ウナギの頭)を売る習慣は、関西料理の“始末の精神”を重んじる大阪独特のものです。また和枝さん(キムラ緑子)の料理シーンでは、大阪・船場の昔ながらの家庭料理『小田巻き蒸し』という、うどんの入った茶碗蒸しを作ったり、ずいき(芋茎)を炊くとき、紅ずいきを使ったりして特徴を出しました」
紅ずいきはほかの地域ではあまり見られない、大阪の伝統料理。昔は、妊婦に食べさせると乳の出がよくなるといわれており、なかでも生のずいきを食べることができるのは旬の季節だけに限られている。
「仕入れに関しては、生産者の方にお願いして、種まきや収穫の時期を早めたり、遅くしたり。撮影の時期に合わせて、なるべくとれたての野菜を表現したくて、ムリをしていただきましたね(笑)」
そんな広里さんのこだわりのかいあって、出演者からは「料理がおいしくて、食べすぎてしまう」との声があがっている。
「天神祭のハモ料理は、湯引きやハモすき、ちらしずしなどを平らげて、しっかり“始末”してくださいました(笑)。いちばん好評だったのは、牡蠣鍋(第13週で登場)で、赤みそや合わせみそのイメージがあるようですが、白みそを使いました。しょうがをたくさん入れたので、甘ったるさもなく、体もぽかぽかになります。みなさんが喜んでくださっている姿を見ると、次はこうしよう!こんな野菜も見せたいなあ、とどんどん欲が出てきてしまって(笑)。このドラマを通して、幅広く、大阪の食文化を知ってもらえて本当にうれしいです」