連続テレビ小説『べっぴんさん』の第17週、すみれ(芳根京子)は任されていた大急百貨店の展示のテーマを「女の一生」に決め、明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と準備を進めていく。一方で、家出中の娘・さくら(井頭愛海)は姉のゆり(蓮佛美沙子)の家からいまだ帰らない。すみれは夫の紀夫(永山絢斗)にゆりの家に行かないかと誘われるが、「行ったところで、言えることがない」と断り、「母親としてさくらにどんなふうにしたらいいのか……」と言葉を詰まらせる。そんなすみれを気遣いながらも、「家族は一緒にいるものだと思う」と思いを伝える紀夫。
ある朝、売り場担当の悦子(滝裕可里)が娘の弥生とフィアンセを連れてキアリスにやってくる。その相手を見て、一同は驚きのあまり絶句する。悦子の言葉とともに姿を現したのは、大急百貨店の小山(夙川アトム)。「いつも悦子がお世話になっています」と一礼する小山を見ながら「全然知らなかった……」と呆然とする君枝たち。弥生は悦子にやっと「いいよ」と言えたと微笑み、小山は「生涯をかけて2人を幸せにする
とすみれたちに約束するのだった。新しい家族の門出に祝福の拍手を送るすみれたち。
一方、さくらは学校帰りにジャズ喫茶「ヨーソロー」を訪ねる。アルバイトの五月(久保田紗友)にドラム奏者の二郎(林遣都)がプロのドラマーを目指して来年には東京に行くかもしれないと聞き、胸を痛める。一方、紀夫はすみれの義兄・潔(高良健吾)を飲みに誘い、家出したさくらを預かってもらっていることを「親として情けない」と吐露する。そんな紀夫を励ますように「人は、誰でも長い人生のなかで迷ったり、何かを見失ったりすることもある」と語ると、「待つしかないんちゃうか。さくらちゃんが何かを見つける日を。必ずその日は来るわ」と潔。
「そういえば栄輔さんが……」。紀夫は、昔、潔と一緒に働いていた岩佐栄輔(松下優也)が神戸に戻ってきたと告げる。若者に大流行している洋服店「エイス」を経営しているのが栄輔だと思い当たった潔は、早速大急百貨店に推薦の話を持ちかける。すると「君の言う、エイスは彼の店のことだね?」と大島社長。応接室の扉が開くと、栄輔が部下の玉井(土平ドンペイ)とともに現れる。驚く潔に、実は何度か栄輔と会っていると言う大島は、潔も推薦もあるならと、「エイス」の10日間の期間限定の出店の話を進めるようにと指示する。
その晩の野上家の食卓で、さくらが高校を辞めてすぐにでも東京に行きたいと言い出し、困惑するゆり。そこへ、潔が栄輔を家に連れて帰ってくると、目を丸くして驚く。「どれだけ心配したと思ってるの!? どれだけ捜したと……」。10年ぶりに栄輔の姿を目にしたゆりは、突然失踪したことを怒りつつも、無事に再会できたこと泣いて喜ぶのだった。
一方、すみれは同僚の明美と「ヨーソロー」を訪れ、子育ての相談をする。「正直、どうすればいいのかわからないのよ。早くに結婚して、子供を産んで、さくらに親にしてもらいながら、大人になったような気もする
と語るすみれ。ママのすず(江波杏子)から意外な身の上話を聞くのだった。
外国船に乗り、コックをしていた男性と結婚し、神戸で小さな洋食屋を営んでいたというすず。その夫を戦争が始まる前に病気で亡くし、その後、戦争でひとり息子を亡くしたという。「まさかな、この年で、こうして自分ひとりで生きていくことになるなんて。わからんもんよ、女の一生なんて」と。すずの話を聞き、「女の一生」について改めて考え直すすみれ。
「女の一生」をテーマに展示会の構想を練るすみれ。同じ場所で出店の準備を進めている栄輔は、家出中のさくらについてすみれに話を持ちかける。「家族仲良く暮らしてるもんやと思ってました」と話す栄輔に、自分も紀夫もそう思っていたと言い、「家族で乗り越えなね」と答える。
そのころ、社長の紀夫から期待されていたキアリス新入社員の西城(永瀬匡)は、新規の工場開拓に音をあげ、突然会社をやめてしまう。昭一(平岡祐太)と勝二(田中要次)らとの男会でも、ため息をつき肩を落とす紀夫。足立(中島広稀)と中西(森優作)を前にして、昭一に「ここに宝が2人もおるやないですか」と励まされ、笑顔を取り戻すのだった。
さくらは学校帰りに「ヨーソロー」に立ち寄り、二郎を見つける。龍一(森永悠希)の話でさくらが家出中だと知った二郎は、「幸せやな。待ってくれとる親がおる」とつぶやく。何も言い返せないさくらは、ママのすずに、すみれが明美と店に飲みに来たと聞き、戸惑う。そんなさくらに「お母さんのこと、こういう人やって決めつけへんほうがいいで」と諭すすず。さらにこう続けるのだった。「あんた、何がしたいん? なんとなく生きてたら、流されるだけやで。自分の人生の舵取りは、自分でせなね
。
すみれは、「ヨーソロー」のママ・すずの言葉をヒントに、人生にはいろいろな生き方があることを表現しようと思いつく。新たに君枝が描いた絵には、結婚、出産だけではなく、教師や美容師、スチュワーデスなどいろいろな職業に就いた女性たちの姿が。「人の人生は一辺倒やないなって思ったの。子供を産むだけやない。やりたいことを見つけて頑張る人もいるし」とすみれ。スケッチのなかには、家政婦の喜代(宮田圭子)や、すずをイメージした女性も描かれている。「2人とも働く女性よ」と君枝。
数日後、大急百貨店の応接室では、「エイス」が予測の200%アップの売り上げを記録したと話題に。「エイスに引っ張られるように、百貨店全体の集客数も上がっている」と小山。若者向けの女性ファッションに進出しようと事業を進めていた潔は、栄輔が経営する「エイス」も同じ分野に進出しようとしていることを知り、対決必至な状況となる。
その夜、潔の家に招かれた栄輔は、潔が社長を務める「オライオン」が若い女性向けの店を大急に出店するのは辞めたほうがいいと進言する。「今の若者たちに何がうけているのか、どれだけ勉強しましたか?」と栄輔。潔の会社が任せているデザイナーを知る若者はおらず、知っていても、40代以上の洋服を作る人という程度。そんなデザイナーに丸投げしていては売れない、と。「若者向けと婦人服は、まったく違うんですよ」と主張する栄輔に、潔もゆりも言葉を失うのだった。
学校帰りに「ヨーソロー」を訪れたさくら。二郎と龍一が、五月が熱を出して店を休むと話しているのを聞き、二郎のふとした言葉から、五月と二郎が同棲していることを知る。「なんや、知らんかったんか? 2人が付き合ってること」と龍一。
キアリスが担当した大急百貨店の展示がお披露目となった。挨拶を求められたすみれは、展示のテーマを「女の一生」とし、いろいろな生き方をする女性たちを応援したいという思いが込められていると話す。「生まれてくる赤ちゃんたちに、どう生きてもいい、どんなふうに生きても、それが自分の選んだ道ならば応援するという母親たちの思いも込められています」と語るすみれ。
展示の制作を通じて思いを固めたすみれは、ゆりの家にいるさくらに会いに行く決意を固める。すっかり心を閉ざしてしまっているさくらに、すみれは自分の気持ちを必死で伝える。さくらのためなら仕事も辞めてもいいと語るすみれだったが、自分が何をしたいのか、どんなふうに生きていきたいのか、何も考えていないと答えるさくらに、「それでこんなことをしてるなら、それはだだのわがままよ」と厳しく叱ってしまう。そして、「やっぱり東京行きたい」とさくら。すみれと離れたところで暮らしたいと言い残し、部屋を出て行くのだった。
第18週の『べっぴんさん』は、すみれの下に一通の手紙が届く。キアリスが作る赤ちゃん用の肌着の素材となるメリヤスを作る工場が廃業するという知らせだった。すみれは父・五十八(生瀬勝久)と共に工場を訪ねるが、今まで通りのメリヤスは手に入れられなくなり、窮地に陥る。一方、家出中のさくらは、プロのドラム演奏者になるため上京しようとしている二郎を追って東京に行こうとするが…。