「最初は気も張っていたけど、1年経ってみると、やっぱり寂しいね。土曜日の夜とか日曜日に一杯飲みながら思っちゃうんですよ。『あぁ、いま俺は、一人でこの鎌倉の景色を見ているんだな』って。そんなこと思わなきゃいいのにね……」

 そう話すのは、みのもんたさん(68)。妻で専属スタイリストを勤めていた御法川靖子さん(享年66)が、がんで亡くなって1年が過ぎた。

「5月22日の命日にはホテルオークラで一周忌をやったんです。会場の入口に、ダーッと、野の花の鉢植えを並べてもらってね。女房が好きだったお花屋さんに頼んで、散歩道みたいにしてもらったんです。根っこのついている本当の野の花で。数カ月がかりで集めてくれたそうですよ。奇麗だったね」

 10年以上前から「腰が痛い」と言っていた靖子さん。だが、鍼やマッサージでも良くなることはなかった。そして、一昨年の7月、靖子さんが腰をまっすぐにして歩けなくなったことで、本格的に『PET』検査を受けることに。すると骨盤にがんが見つかった。みのさんは、「そのときには彼女はもう覚悟していたんじゃないか」と語る。

「亡くなった後でわかったんですけど、納戸の中がきれいに整理されていた。中に何が入っているか書いてある紙が全部の箱に貼ってありました。お手伝いさんに聞いたら、1週間がかりで整理していたという。『ええっ!』と、驚きました。僕が知らない間に、全部……」

 生前、靖子さんは境界型糖尿病のみのさんを気遣い、血糖値が上がらないようにと、食事のことをいろいろ考えてくれ、お酒のことでは毎日飲みすぎに注意されていたそうだ。

「正直いって酒量は、彼女が亡くなってからのほうが増えましたね。1年前は悲しいという気持ちが強かったけど、今では、悲しいんじゃなく、寂しい。今住んでいる鎌倉の家は全部、彼女が設計して、13年かけて造ったものです。でも彼女が住んだのは3年半。まだ納骨もしていません。僕がお墓に入るときに、一緒に入りたいというのが遺言でしたから」

 遺骨は、靖子さんがいちばん好きだったキッチンに置いてあるという。富士山、江ノ島、大島、初島、そして鎌倉の山々が一望できるキッチンだ。

「僕は家に帰るとキッチンで冷蔵庫を開ける癖がついていて。何か女房に話しかけるんです。まずいな、俺、ボケが始まったかなぁ、なんて思いますけど(笑)。家では骨壺のそばとか、彼女の遺影のそばで一人で飲んでいます。
銀座で飲んでいて誰かに『今何がしたい?』と聞かれてね。思わず『会いたいな』と。もう一度会いたい。怖いカミさんだったけど……」

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