高視聴率をマークしている、日曜劇場『天皇の料理番』(TBS系)。明治から昭和という激動の時代を描いている歴史劇に欠かせない時代考証を担当しているのが、山田順子さん(61)だ。彼女に、この人気ドラマの撮影秘話を聞かせてもらった。

 明治時代の所作にも詳しい山田さんをうならせたのが、夫をけなげに支える妻を演じた黒木華(25)だったという。

「黒木さんが着物を畳むシーンがあり、助監督が『指導をお願いします』と私を呼びに来たことが。でも、現場に行ってみると、彼女は正しく畳んでいました。私は『完璧です。本番始めてください』と言うだけ。着物を縫う撮影でも、針や布の持ち方をお教えするケースが少なくないのですが、彼女の場合は、私がなにもしなくても『ハイハイ』と、上手に裁縫していました」

 また、黒木の髪型や着物の模様は、明治から昭和になるにつれて微妙に変化しているのだが……。

「黒木さんはその時代、時代に合った所作や作法をうまくこなしていました。ふだんは、明るくてお茶目な方ですが、作品に出演するために、その時代の女性をよほど研究なさったのでしょう。私としては、楽にお仕事させてもらいました」

 高視聴率の背景には、撮影現場の雰囲気が大切――。それは山田さんが’09年のドラマ『JIN ―仁―』の時代考証を担当したときにも感じていたという。今回の現場では、佐藤の差し入れが、いいムードを醸し出したようだ。

「収録現場には、出演者のみなさまがいろいろ工夫をして差し入れてくださっているのですが、鮮明に覚えているのが、主演の佐藤建さん(26)が差し入れた沖縄料理の『スパムのおむすび』です。ご飯、卵焼き、焼いたスパムを重ね、それをのりの帯で巻いてあり、食べやすいように1つ1つラップで包んである手巻きのおにぎりが100個も。あまりにおいしかったから、佐藤さんにお礼を言ったところ『卵焼きが入っているのが、おいしかったでしょ』と。彼自身が好きなものを、差し入れにされたんでしょうね。そんな心のこもった差し入れに、座長として気を配っていたんだなとあらためて、感心しました」

 料理人として駆け上がっていく役の佐藤が、スタッフの前だけに披露した包丁さばきも、思い出深いと山田さん。

「昨年の暮のスタジオ撮影のときに、佐藤さんが年越しそばを振る舞ってくれたんです。そのときに、かき揚げがのっていたんですが、その野菜を黙々と切っていた佐藤さんが印象的でした。撮影前から特訓していた包丁の扱いがとにかくすばらしくて……。しかも、スタッフ1人1人に『来年もよろしくお願いします』と声をかけて、温かい汁を注いでいたんです」

 いよいよドラマは大詰めで、12日が最終回。時代考証の視点から見てみるのもおもしろいかもしれない。

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