住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代に影響を与えられた映画の話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、「’80年代」を振り返ってみましょうーー。
「私自身、初めて友達同士で、高校時代に見に行った映画が『フラッシュダンス』(’83年)。主役のジェニファー・ビールスが、椅子にまたがった状態から、わっと一気に踊り出すシーンが衝撃的でした。映画公開後、日本ではジャズダンスブームが巻き起こりました。レッスン生はみんなジェニファーのように、レオタードにクシュクシュっとしたレッグウオーマー姿だったことからも、その影響力の強さがわかります」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。『フラッシュダンス』はダンサーを夢見る18歳の女性が主役。養成所のオーディションにチャレンジしたいが、バレエ経験がないために臆してしまう。だが、さまざまな人との出会いと別れのなかで成長し、オーディションに臨むというもの。
『フラッシュダンス』、それに続く『フットルース』(’84年)は、洋楽をより身近に感じるきっかけを与えてくれた。
「少し上の世代は小中学生でABBA、私の世代はぎりぎりビリー・ジョエル、『フラッシュダンス』などの公開時に中学生ぐらいだった世代は、両映画が洋楽への入口になったのではないでしょうか」
テレビドラマの『スチュワーデス物語』(’83〜’84年・TBS系)では『フラッシュダンス〜ホワット・ア・フィーリング』、『スクール☆ウォーズ』(’84〜’85年・TBS系)では『フットルース』の『ヒーロー』のカバー曲が主題歌として採用された。
同時期にヒットした荻野目洋子の『ダンシング・ヒーロー』(’85年)や長山洋子の『ヴィーナス』(’86年)も洋楽のカバー曲だ。
「原曲とカバー曲の歌詞を比べる人も。でもレコードは中高生にとって高価だったため、レンタル店で借りていた人は多いはず。録音するとき、音の違いはよくわからないけど、なんとなく、奮発してメタルテープにしたりしていましたよね」
音楽を気軽に聴くための機器が進化した時代でもあった。
「SONYのウォークマンやSANYOのラジカセ『おしゃれなテレコU4』が’79年に登場。第2弾のダブルU4は、ダブルで一気にダビングできたのが画期的でした」
洋楽好きな本格派は、さらにミニコンポをチョイスした。
「今はコンパクトでシンプルなデザインが主流ですが、当時はイコライザーのボタンがたくさんついた、ゴテゴテしたタイプも、若者の心をつかんだものです」
さらに、海外旅行に出かける人が急増したのも’80年代。
「映画をきっかけに、NYのブロードウエーでCATSを見たり、ダンス留学する人も増えました」
『フラッシュダンス』は、洋楽、ダンス、ミュージカルを日本に広めるきっかけにもなったのだ。
「女性自身」2021年6月1日号 掲載