益子直美、大黒摩季も告白した不妊治療の葛藤…“母になることがすべてではない”という選択肢を
画像を見る 女性の場合、日本ではドナーも認められていない(写真:イメージマート)

 

■“罪悪感”と“後悔”で思い悩む女性たち

 

さらに、不妊治療の先の見えなさも、女性たちを追い詰める。

 

「不妊治療は1回やったら終わりではなくて、毎月毎月繰り返されます。“今回もまたダメだった”というふうに不成功体験が反復してストレスが増え、毎月どんどん追い詰められていくということはあると思います」

 

船曳医師は、不妊を思い悩む女性が自分を責めるのに多い考え方として、2つのことを挙げる。

 

「ひとつは“罪悪感”。愛している人の子どもを産んであげられないという気持ちや、親に孫を見せたいのに見せられないという気持ちです。

 

そして、もうひとつは“後悔”。結婚なり、子づくりなり、“もっと早くに何とかしておけばよかった”と後悔するんです」

 

また、益子の冒頭のコメントのように、周囲の言動によって傷つくこともあるほか、不妊治療を受けていることを話しづらかったり、悩みを共有できる人が見つかりづらいことも苦しみの一因だろう。

 

大黒は、妊娠を断念し、落ち込んでいる時期に、

 

《同情してくれる人がいても、あなたに私の何が分かるのかと邪悪な気持ちになり、そんな自分がイヤになって余計自己嫌悪に陥り、どんどん暗闇に落ちていく》

 

と感じていたというし、益子は不妊治療中であったことを、

 

《子どもができない子を産んでしまったと思わせたら申し訳ないと思って、私を産んだ母にも言えなかった》

 

と、話す。

 

「同じ立場の方だったら悩みを共有できると思いますが、誰が同じ悩みを持っているかもわからないですよね。それに自分が“かわいそうな立場”であると見せたくないという気持ちもあるでしょう。自尊心が傷つけられるんだと思います。

 

本当は“劣っている”ということではありませんから、“今こんな治療をしています”と言える環境にあればいいのですが」

 

その背景には、無意識の“呪縛”がありそうだーー。益子は、

 

《「結婚したら子どもを産んで当然」とか「子どもができないと女性失格」みたいな価値観を自分のなかに持ってしまっていたんですよね》

 

と話し、また大黒も次のように。

 

《望んでいた出産は永遠に叶わない。私はもう「女」ではなくなってしまうのだろうか。真っ暗闇の絶望》

 

「いまだに“産めないと女性失格”と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。みんなそれぞれいろいろな役割があっていいし、いろいろな幸せがあるはずなのに、“お母さんになることがいちばん幸せ”という思いを、無意識のうちに持っている方が、日本には特に多いからではないかと思います」

 

つらい経験を経たいま、益子はバレーボールを通じて、子どもたちと触れ合うことで前向きな日々を送れているそうだ。

 

大黒も、これからは歌手として《人を鼓舞し、癒し、盛り上げる》と明るく宣言している。

 

「体験をお話しされることはつらかったと思いますが、不妊治療に悩む方たちの救いになっているのは間違いありません。

 

お2人は、不妊治療の結果は出なかったかもしれませんが、改めて自分の役割、生き方を見つけていらっしゃいます。

 

やはり、不妊治療に臨む女性の心の負担を減らすためにも、“母親になることがすべてではない”ということ、多様な選択肢があるんだということを知らしめていくべきでしょう」

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