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(写真・神奈川新聞社)

横浜の都心臨海部を周遊する水陸両用バスの社会実験が今夏始まった。今月3日にはチケット販売所が2カ所に開設され、一般利用が本格化。水陸両用バスは河川を走る東京都、大阪府などで導入されているが、海上運行は横浜だけ。運行事業者の日の丸サンズ(東京都文京区)は「ロケーションは全国トップクラス」としており、港町の新たな観光の目玉として期待されている。

 

水陸両用バスは、午前11時台から午後4時台に1日4便を運行。週末など混雑時は増便する。日本丸メモリアルパークと赤レンガパーク2カ所からスタートして陸上を走った後、同パーク内のスロープから進水、新港ふ頭周辺を一回りする。

 

潮の満ち引きや気象条件でコースは変更されるが、時間は1時間前後。料金は大人3500円(小学生以下1700円)。チケットは出発1時間前から先着順で販売する。

 

今月1日の午後1時、日本丸メモリアルパーク。15人ほどの乗客とともに、水陸両用バスに乗り込んだ。発車後ほどなく、「乗り換えることなく、陸と海の世界を二つ同時に楽しめます」。マイクを握る同社社員でアテンドの木原菜々子さん(21)が魅力を説明する。

 

バスには2種類のエンジンを搭載。陸上はタイヤで、海上は車体後部のスクリューとかじで進む仕組みだ。特注品のため1台約1億円の費用がかかっているという。

 

真っ赤な車体の側面には大きなクジラのデザイン。派手な装飾のため、歩道からカメラで撮影したり、手を振ったりする人の姿も目立つ。車内に窓がないため、風を感じながら観光スポットを巡回できるのも魅力の一つだ。

 

県庁本庁舎と横浜税関、市開港記念会館の「横浜三塔」や赤レンガ倉庫などを通過し、約10分の陸上観光を終えると、再び日本丸メモリアルパークへ。そのまま新設されたスロープを下りると海に進水。車内まで水しぶきが飛ぶほどの迫力に歓声が上がった。

 

運転する佐々木直也さん(46)は大型二種免許と1級小型船舶の免許を保有。車のギアと船のかじに当たるレバーを交互に操作して運行に当たる。

 

海上での揺れは思ったよりも少ない。橋をくぐり、視界が広がると、横浜港大さん橋国際客船ターミナルに停泊している大型客船「飛鳥2」が見えてきた。接近して真横を通る。あまりの大きさにまた歓声が上がった。さらに、海面から横浜三塔を同時に眺められるポイントにバスが停泊すると、乗客たちは盛んにシャッターを切っていた。

 

スロープを上がり陸地に戻ったところで運行終了。長男、母親と初めて乗った同市泉区の主婦(31)は「見慣れているはずの景色でも違う視点で楽しめた。料金は高いかなと思ったけれど、それだけの価値があった。また乗りたい」と話した。

 

同社によると、8月10日から今月2日までのプレオープン期間中の利用者数は2515人。天候不順で営業日数は28日にとどまった。一方、利用者アンケートでは、夕景を楽しめる時間帯が特に好評だったという。同社は年間約7万人の利用を目指しており、担当者は「観光客だけでなく、市民にも楽しんでもらえるはず。リピーターを確保するために夜間の運行やコースの拡充も検討したい」と話している。社会実験は運行状況を検証しながら2020年3月まで行われる予定。

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