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(写真・神奈川新聞社)

 

横浜市神奈川区の大口病院で入院患者2人が死亡した点滴連続殺人事件で、4階に残されていた複数の未使用点滴から、界面活性剤の成分が検出されたことが19日、捜査関係者への取材で分かった。中毒死の判明から、間もなく1カ月。神奈川署特別捜査本部は、不特定多数を狙った可能性もあるとみて慎重に調べているが、決定的な物証が乏しい上に動機面から犯人像を描くことは難しく、容疑者を絞り込めずにいる状況だ。

 

捜査関係者によると、死亡した男性2人が入院していた4階のナースステーションに保管されていた未使用の点滴約50袋のうち、約10袋でゴム栓の保護膜に注射針で開けたような穴が見つかっていた。特捜本部が中身を調べたところ、2人以外の患者に使用する予定だった点滴の一部から界面剤が検出されたという。

 

同病院では、9月18日に横浜市青葉区の男性(88)が、同20日に同市港北区の男性(88)が相次いで中毒死し、2人の遺体から殺菌作用が強い界面剤を検出。4階ステーションには界面剤を含む消毒液「ヂアミトール」があり、特捜本部は医療や院内事情に詳しい人物が、投与前の点滴に注射器で消毒液を混入させた疑いがあるとみて調べている。

 

特捜本部の設置から、23日で1カ月。容疑者を絞り込めていない最大の理由は、物証の乏しさだ。当時院内に防犯カメラはなく、4階ステーションに保管されていた点滴は机上や洗面台などに置かれ、誰でも触れられる状態だった。

 

特捜本部は、使用済みの注射器や点滴袋など大量の医療廃棄物を押収して鑑定を進めているが、ある捜査関係者は「病院関係者の指紋は出て当たり前。指紋や足跡で勝負するような事件ではない」との見解を示している。

 

動機面からの解明も困難を伴っている。4階の入院患者の大半は寝たきり状態で、2人が入院したのは死亡する数日前。被害者に恨みを抱えていたとは考えにくく、未使用の点滴からも界面剤が検出されたことで、無差別に異物を混入した疑いもぬぐい去れない状況になっているからだ。

 

これまでの調べで、犯行時間帯は4階の患者が3連休中に使用する点滴が一括搬入された9月17日午前以降との見方を強めているが、夜間はステーションが不在になる時間帯もあり、特捜本部は出入り業者など外部の人物からも事情を聴くなどして捜査を進めている。

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