引退前夜に行われた最後のライブで歌う安室奈美恵さん=9月15日、宜野湾市

 

【宜野湾】9月に引退した沖縄県出身歌手・安室奈美恵さんの最後のライブ会場となった宜野湾市で、安室さんにまつわる品々を常設展示するミュージアム構想が動きだしている。主導する市観光振興協会は、宜野湾市をファンにとっての「聖地」にすることで、市や県全体の観光発展の一助にしたい考えだ。ただ、実現には予算の確保や場所の選定、ファンが納得する展示や運営手法などの課題も想定される。

 

宜野湾市は、安室さんが1995年に初めて沖縄凱旋(がいせん)ライブを開催した場所でもある。今月9日には、引退前にファンが安室さんに思いを届けた直筆サイン入りの「ハートポスト」が、日本郵便沖縄支社から市と市観光振興協会に寄贈された。

 

松川正則市長は取材に対しミュージアム構想について「思いはあるが、まだ具体的なものはない」と答えたが、「ハートポスト」の寄贈式では「全国の皆さんとハートフルな思いを共有できる場にしたい。今後の展開を楽しみにしてほしい」と事業に含みを持たせた。

 

市、市観光振興協会、日本郵便沖縄支社の3者は「宜野湾ハートプロジェクト」を立ち上げ、(1)実際に投函(とうかん)できるハートポストのレプリカの設置(2)ハート形の風景印の押印サービス(3)寄付金付きハートカードの販売(4)ハートポストのフレーム切手による寄付―などを計画する。引退1年となる来年9月16日にはファンが集まるイベントも予定する。

 

■4200人分の署名

 

ポストは10日以降、市大山の宜野湾マリン支援センターに常設されている。同センターに入居する市観光振興協会によると、連日県内外からファンが訪れ、週末には100人近くが来た日もあったという。12日には、ミュージアムの設置に賛同するファン約4200人分の署名が県外から同協会に届いた。

 

17日、山梨県から訪れた宮崎千裕さん(32)は、ポスト常設のニュースを知り23年ぶりに沖縄を訪れた。「最後のライブは仕事もあり来られなかった。ポストやサインを見るだけでテンションが上がる。ミュージアムができたら必ず来たい」と笑顔を見せた。

 

同協会の高江洲義之事務局長(53)は「ファンのためにも、沖縄のためにもスピード感を持って構想を進めたい。それが安室さん本人のサインが入った貴重な品を頂いた責任だ」と気を引き締める。

 

ファンにとっての「聖地」とはどういった場所を指すのか。その実例として、南風原町津嘉山に昨年8月、アニメツーリズム協会から「訪れてみたい日本のアニメ聖地」に選ばれた場所がある。ウルトラマンシリーズの脚本を手掛けた故金城哲夫さん(1938~76)の書斎がそのまま残されている「金城哲夫資料館」だ。

 

「来た人は涙を流したり、哲夫が使っていた椅子に座って写真を撮ったりする。もう亡くなってから43年がたつが、彼らの記憶には今も残っているんだろうね」。哲夫さんの弟で、資料館を管理する和夫さん(71)はそう話す。

 

資料館には20年ほど前から平日問わず、ほぼ毎日全国からファンが訪れる。中には中国やタイなど海外から来る人も。脚本家と歌手でジャンルこそ違うが、和夫さんは「安室さんも若くして引退したから、伝説になっていくだろうね」と話す。

 

■反対意見も

 

聖地化の鍵を握るミュージアム構想だが、インターネット上などでは「安室さんを金もうけに使うのか」「衣装を展示して壊れるくらいなら期間限定でもいい」など批判的な意見も見られる。高江洲事務局長は、ミュージアムなどで得られる収益について「ハートポストが日本郵便に寄贈された時、安室さんから『沖縄の未来のために使ってほしい』という趣旨のメッセージがあったと聞いている。その言葉通り、収益は沖縄の経済発展や子どもの貧困問題などに寄付する形にしたい」と運営方法を模索する。

 

また、展示を想定する衣装や手形などについては、安室さんが所属していた事務所などに著作権や所有権があるが「管理する側もファンに見せる必要性を感じていると思う。展示ができるよう相談したい。安全に管理するためにも専用の場所が必要だ」と語った。

 

市観光振興協会は、市が施設の再編を計画している宜野湾海浜公園内にミュージアムを設置したい考えだが、具体的な検討はこれからだ。県内外で注目を集める中、関係者やファンと対話をしながら進めていくことが実現の鍵を握りそうだ。 (長嶺真輝)