(写真提供:神奈川県水産技術センター/神奈川新聞社)
海藻を食い荒らすムラサキウニに廃棄されるキャベツを与えると、しっかりと身が付き、おいしくなる-。そんな蓄養技術を県水産技術センター(三浦市三崎町城ケ島)が開発した。同センターによると、蓄養で食用となるほど身が詰まったムラサキウニに成長するのは全国初。磯焼けの原因とされ、駆除対象となっている厄介者の餌として農業残渣(ざんさ)を活用するという、マイナス要素を組み合わせてプラスに転じさせる発想だ。今後はムラサキウニの商品化を目指しており、産官学が連携した“一石三鳥”の取り組みを進めていく。
同センターによると、浅い岩場の海藻が衰退や消失する磯焼けが、10年ほど前から相模湾を中心に県内各地で発生。カジメなど海藻を好んで食べるムラサキウニが原因の一つとされている。一方、キャベツが特産の三浦市内では、規格外のものや外葉などの残渣が毎年大量に発生している。
二つの問題を同時に解決し、さらに有効利用しようと、同センターでは2年前から、ムラサキウニの蓄養実験を開始。ダイコンやブロッコリー、マグロなど約20種類を餌として試したところ、特にキャベツは一玉分を80個のムラサキウニが3日間で食べ切るほど好んだという。
ムラサキウニは食用となる生殖巣と呼ばれる身の部分が少なく、全国では九州や四国の一部を除き、漁獲対象になっていない。実験前の身は体重の2~3%だったが、キャベツを2カ月ほど食べさせたところ、平均で12~13%、最大で17%ほどに育ったという。
甘みが増す一方、主要な苦み成分は市販される食用ウニより平均で4分の1ほどに抑えられることも判明。同センターの臼井一茂主任研究員は「キャベツを食べることで苦み成分が体の中でつくり出されなくなっているのでは」と推測する。
こうした効果に加え、ムラサキウニの旬の時期が6月ごろで、キャベツの出荷シーズンの終盤と重なることから、同センターはキャベツを餌のメインにした研究を進める。