イラスト・小谷茶(こたにてぃー)
インターネットでの差別的な書き込みをまとめ、名誉を傷つけられたとして、フリーライターの女性がまとめサイト「保守速報」を訴えた裁判の結果が11月16日に出ました。 裁判所はまとめサイト側に200万円の支払いを命じました。
まとめサイトは、インターネットの書き込み・投稿を、まとめて読みやすくしたサイトです。
まとめサイトと一口に言っても、実際はさまざまな「まとめ」手法が存在します。えられた「保守速報」は、インターネット掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)での書き込みをまとめる、「2ちゃんねるまとめサイト」に分類されます。
これまでまとめサイトは「私たちが書いたわけではなく、まとめただけです」と責任を回避するスタンスでした。(実際に裁判で保守速報側はそう主張しています)
しかしながら今回、一審で支払い命令が出たことで今後のネットの風向きが変わってくるかもしれません。
同時にTwitterの「RT」やFacebookでの「シェア」などの、人の書き込みを「転送」する操作も今まで以上に気をつける必要があります。
差別的な言説でアクセスとお金を集める保守速報
今回の裁判では、保守速報が原告の在日朝鮮人のライター、李信恵さんへの「ゴキブリ」「死ね」「ババア」「朝鮮の工作員」などの侮辱的な書き込みを1年以上にわたってまとめ、名誉を毀損したという裁判です。
保守速報は表向きには「日本の伝統や文化を愛する」書き込みをまとめた保守情報サイトということになっています。しかしながら中身を覗いてみると、韓国・中国人をはじめとした特定の国、人種への差別的な言動が多くまとめられたヘイトサイトで、その実態は本来の「保守」とはかけ離れています。
今回、在日朝鮮人の李信恵さんは保守速報のターゲットとなり、人種・民族・女性差別的な投稿を繰り返し繰り返し行われました。裁判にこそなっていませんが、李信恵さん以外にも標的にされ、個人攻撃や誹謗中傷の内容をまとめられて、深く傷ついた人も多くいます。
保守速報を始めとした、まとめサイトはなぜこのような酷い「まとめ」を行うのでしょうか。
その理由の一つに広告収入が考えられます。
推定なのは、きちんとした動機は本人しか分からないからです。
無料で読むことができるWebサイトには、ページ内に広告が掲載されています。
サイトでの広告は、アクセス数や広告のクリック数に応じて広告収入が支払われます。
一般的に広告収入はアクセス数と比例すると言われているので「お金を稼ぎたければアクセス数を増やす」が定説です。
そのため、お金儲けが目的のサイトでは、どんな手を使ってでもアクセスが稼ぐネタを投下するのです。
きちんと取材し、研究・分析を行って記事を書くことは時間とお金がかかります。
しかし、ネットの書き込みをまとめ、煽る見出しをつけつつも、責任や正確性は「まとめただけです」で逃げ、手軽にアクセスを集めるまとめサイトは、お金儲けのしやすい構造になっていました。
しかしながら今回のように裁判で「まとめ」の責任が問われ、賠償請求が出ることによって「お金を稼ぐには、割にあわない」となると、いずれ消えていくでしょう。
今回の判決はネットの今後を占う意味で、大きな一歩を踏み出したのかもしれません。
保守速報側は「控訴するかも」とサイトで表明しており、まだ裁判は続く可能性はありますが、今後の判決を見守りたいと思います。
同時に、まとめサイトだけでなく私たちも気をつけなけらばならないのはWeb の「転送」機能です。
Twitterは「RT(リツイート)」、Facebookは「シェア」という名前で、人の投稿を自分の友だち・フォロワーに伝える転送機能があります。
こうしたもので「人が書いたものだから…」と、つい無責任に信ぴょう性の薄い情報や、攻撃的な投稿を転送してしまいがちですが、「私が書いていないから…」と逃げる姿勢はまとめサイトと同じです。
転送機能も、自分の判断で行うものなので、責任をもってしっかりと対応したいです。