住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、恐怖に震えた心霊写真や怪奇現象の話。活躍する同世代の女性と一緒に、’80年代を振り返ってみましょうーー。
’80年代は空前のオカルトブーム。夏休みの子どもたちは、午前中はプールに出かけ、午後はワイドショーの心霊写真のコーナー、夜は怪奇特番を楽しみにしていました。一部の小売店でも、心霊写真展などを開催していたようです」
こう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。それほどのブームになったのは、社会的背景もあるという。
「’60年代から’70年代にかけて、日本は高度経済成長期を迎え、物質的に豊かになりました。その一方で“このまま科学技術を妄信していいのだろうか。人知を超えた大切なものがあるのではないか”と考える人も増えたのです」
ベトナム戦争が泥沼化した時代、反戦運動、瞑想、サイケデリックなどに傾倒する“ヒッピー文化”も台頭。また、’69年のアポロ11号の月面着陸に人々は心を躍らせた。
「UFOや宇宙人など、未知のものへの探求心がくすぐられたことも、オカルトブームの原動力になったのではないでしょうか」
その言葉どおり、’70年代に入ると、ユリ・ゲラーのスプーン曲げを代表とする超能力、口裂け女やネッシー、ツチノコの目撃談など数々のブームが起こり、コンテンツも細分化されていく。
「現代ではデジタル技術を使って、心霊写真など容易に加工できますが、当時は紙焼き写真。一般の人が合成するのは難しく、より一層、信憑性が高く感じられました。修学旅行などで日光の華厳の滝の前で記念撮影した際は、写真に“何か”が写り込んでいないか、探した人も多いはずです」
’80年代には宜保愛子さんが登場し、「ノストラダムスの大予言」の関連本も飛ぶように売れた。だが、“地球が滅亡する”と予言された「一九九九の年、七の月」を過ぎると、ブームも下火に。
「一連のオウム真理教の事件などの影響もあり、当時すでに大手メディアでは、現実社会を否定するようなオカルト番組を扱いづらくなっていた側面もあるでしょう」
’00年代に入ると、『国分太一・美輪明宏・江原啓之のオーラの泉』(’05〜’09年・テレビ朝日系)などで、オカルトとは似て非なる“スピリチュアル”が注目された。
「かつて霊は“呪い”のようなマイナスのイメージでしたが、スピリチュアルでは“守護霊”など、プラスに捉えられることも多いのが特徴のひとつでしょう。物質的に豊かになり、科学技術が進歩しても、人は目に見えない“何か”に、心の拠りどころを求めてしまうものなのです」