「いやや!」

 

大阪府寝屋川市のマンションの一室から響いてきたのは、女性の絶叫だった。寝屋川市の中学1年生・星野凌斗くん(12)が行方不明になってから1週間。凌斗くんの母は「きっと凌斗はどこかで生きているはず」と必死に捜索を続けてきた。だが8月21日夜9時、凌斗くんの遺体発見の速報がテレビで流れ、母の最後の希望も無残に打ち砕かれてしまったのだ。絶叫はやがてすすり泣きへと変わり、しばらく止むことはなかった――。

 

13日深夜、平田奈津美さん(13)の無残な遺体が発見されたことで発覚したこの事件。凌斗くんの安否に日本中の注目が集まっていたが、“最悪の結末”を迎えたのは8日後。柏原市の竹林から凌斗くんの遺体が発見され、寝屋川市の山田浩二容疑者(45)が逮捕されたのだ。彼は13年前にも少年たちへの監禁事件を起こしていたと報じられている。

 

「02年3月、容疑者は京阪寝屋川市駅付近で市内に住む17歳の少年2人に声をかけ、車内に招き入れたそうです。そこで少年たちをナイフで脅し、手錠をかけ、粘着テープで縛った。さらに顔に液体をかけライターで火をつけたとして、容疑者は逮捕されたのです。ほかにも14歳の中学2年男子たちに手錠をかけて監禁したり、携帯電話を奪ったりという犯行にも及んでいます」(社会部記者)

 

だが逮捕前は、インターネット上などで「何で中学生が夜遊びしているのか」「親たちは何で止めなかったのか」など被害者家族に対する批判の声が上がっていた。奈津美さんは4人姉妹の末っ子で、両親と2階建て住宅で暮らしていた。近所の女性は言う。

 

「奈津美さんのお母さんは50代くらいでしょうか。パン工場で働いています。夕方4時ごろに出勤して、帰宅は深夜の1時ごろ。お母さんは『夜勤のほうが時給がいいから』と、言っていました。きっと経済的な事情もあったのだと思います。お母さんの帰りも遅いからでしょう、奈津美さんが深夜に出かけることはよくありましたね」

 

母親の苦労を間近に見ていたからだろうか、奈津美さんは小学校の卒業文集には、将来の夢について《会社に入ること》と書いていた。

 

「世間ではいろいろ批判はあることも知っていますが、私は奈津美さんのお母さんは、精一杯(子育てを)やっていたと思いますよ」(前出・近所の女性)

 

被害者であるにもかかわらず、いわれなき中傷を受け続けていたのは、凌斗くん一家も同様だった。

 

「特に凌斗くんのお母さんに関してはネット上では“彼女が犯人に違いない”といった中傷まで書き込まれていました」(前出・社会部記者)

 

奈津美さんと凌斗くんは、同じ小学校にも通っていた幼なじみだった。凌斗くんは中学校では男子テニス部に所属しており、練習ぶりもかなり真面目だったという。彼は自宅の近所では“妹思いのお兄ちゃん”としても知られていた。凌斗くんの住んでいたのは、奈津美さん宅から自転車で5分ほどの築40年近いアパートの一室だ。

 

「凌斗くん一家は、今年4月に、このアパートに引っ越してきたばかりでした。小さな妹が2人いて、よく遊んであげていました。お母さんは離婚歴のある30歳くらいの美人で、凌斗くんを溺愛していました。小さい子たちの世話のほかに、日中は仕事にも出ていて大変だったのでしょう。凌斗くんは、友達の家を泊まり歩くことも多かったみたいですね」

 

凌斗くんは、小学校の卒業文集に、将来の夢として《人を助ける人になりたい》と、書いていた。だが危機に陥った12歳の少年を凶刃から助けてくれる人は現れず、彼の夢が叶えられる機会は永遠に失われてしまった。

 

容疑者逮捕の翌日22日、寝屋川市内では、平田奈津美さんの告別式が行われた。遺影を抱いて参列した小柄な母は、肩を震わせるばかり。そして喪主である父も最後まで一言も言葉を発せず、霊柩車に乗り込んでいった。すすり泣くばかりの80人ほどの同級生たちに見送られながら旅立っていった奈津美さん。告別式終了の直後に激しい雨が降ってきたが、それは突然の凶行で愛娘を奪い取られた両親の涙のようにも見えた――。