「これを『ウィズコロナ時代の新しい働き方の選択肢』といえば聞こえはいいでしょうが、れっきとした『リストラプラン』。つまり、体のいい“肩たたき”手段のひとつといえるんです」
企業の経営事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんが、こう話す。
みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)は10月7日、希望する社員が「週休3〜4日」で働ける新制度を12月から導入することを発表した。土、日以外の毎週決まった曜日を「休日」にできる働き方で、「週休3〜4日制」を採用するのはメガバンクで実質、初めてだという。
社員約4万5,000人から募る希望者のメリットを「資格取得や大学、各種スクールの就学などで知識やスキルを磨ける」とするが……。
「一見、働き方改革、コロナ禍のテレワーク促進など、社会情勢を反映したようにみえますが、本音は膨らみすぎた人件費の削減、つまり『中高年をメインターゲットにした給与カット』であることは明白です」(加谷さん)
各銀行は事務作業のAI(人工知能)化が進み、少子化による人口減で利用者は減り、業務自体が縮小される流れであるという。
「メガバンクは海外展開を進め、国内の運営スリム化が急務ですが、規模が巨大な『みずほFG』は整備が追いつかず余剰人員の見直しをせざるをえないんです」
同社の希望者は、「週休3日」となれば、基本給が現状の「80%」に、「週休4日」ともなると「60%」まで減ることになる。
「他行もこの動きに追随する可能性が高く、’21年度初頭あたりから導入するかもしれません。さらに、この流れは他業種にも波及していくでしょう」
「週休4日」を希望してしまうと「基本給」が4割もカットされ、結果、大切な老後資金となる「退職金」の支給額は6割に、「年金」は減ってしまうことに……。
「『週休増・収入減』と引き換えに企業側が『キャリアアップを図ってください』というのであれば、その空き時間を副業に充ててカバーするか、退職後のセカンドキャリアで大きく稼ぐための準備をするべきです。もし夫の週休が増えることになっても、それで『家にいる時間』を増やすのではなく、外に出て『仕事』か『勉強』の時間に充てる方向で話し合いましょう」
たとえば大学の単科受講や学部入学、各種資格スクールなども、昨今の「セカンドキャリア重視」の観点からすると「人生を豊かにする」目的より先に「後半生の収入確保のためのスキルアップ」が来ることになる。
「夫も妻も、20歳前後に学んだ知識がいまも通用すると考えるほうが不自然です。『人生100年時代』をお金の心配なく過ごすには、収入確保できるセカンドキャリアを確立しなければなりません。たとえばマーケティング戦略を学べば、自分自身の売り込み方も含めた『営業力』が身につきます。増えた週休を、後半生のための準備として使うのも、合理的で有意義といえるでしょう」
そして、さらに重要なのは、いま50代の人も、「自分の30代のころにしていたのと同じくらい、頑張る意気込みを持てるか」だと加谷さんは力説する。
「年下の人が上司でも我慢できるのなら、働き口はまだまだあります。どうせ70代になっても働き続けるなら、積極的に発想から若返るつもりでチャレンジしたほうが、得られることも多いはずです」
もはや、ハンコを押すだけで給料がもらえるなんてムシのいい話はない時代、せっかく働き続けるのなら、若々しく充実した毎日にして、“生活の質”向上を目指すべきかもしれない。
「女性自身」2020年10月27日号 掲載