「防衛費をGDP比2%」所得税で賄う場合は約3割の増税か
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■超物価高のなか所得税増税が……

 

同志社大学大学院ビジネス研究科教授でエコノミストの浜矩子さんがこう憤る。

 

「第二次世界大戦での戦時国債で戦禍を拡大させていった教訓があるはず。しかも11月29日に、日本銀行が買い入れている国債が下落して9千億円近くの含み損が発生したことが発表されたばかり。それでもまだ国債を使おうとする自民党政治家の見識が疑われます」

 

一方、財務省は防衛費の増額分を増税で確保するべきだと考えている。伊藤さんが解説する。

 

「防衛費は恒常的な経費のため、安定財源が不可欠といわれます。税目別で収入が多いのは消費、所得、法人の基幹3税ですが、消費税については自民党の宮沢洋一税制調査会長が、社会保障財源にあてるため『防衛費であまり手をつけたくない』と否定的な考え。財源として候補にあげられているのが所得税と法人税です」

 

企業などの所得に対してかかる法人税について、11月21日に経団連の十倉雅和会長が「法人税が独り歩きして先行されて議論されるのはいかがなものか」と牽制した。

 

「岸田首相は、就任当初に“金持ち優遇”となっている金融所得課税の見直しを打ち出しましたが、富裕層からの反発を受けてすぐに見送りました。経済界の意向や政治力のある人の声には“聞く力”があるようですから、法人税に対しては及び腰になる可能性が高い。そのしわ寄せは、声を上げられない国民にいくことになるのです」(浜さん)

 

そうなると可能性が高いのが所得税の増税だ。2021年度の所得税の税収は21兆3千822億円。防衛費11兆円のためには5兆6千億円を捻出する必要があるが、所得税だけで賄おうとする場合、現在より約26%税収を増やさなければならない。

 

仮に、単純に所得税が3割増税される場合、年収600万円の家庭(夫婦2人)の所得税は現在は年16万7000円ほどだが、増税されると約21万7100円と、年5万円の負担が増える。累進課税となっている所得税は、収入が上がるごとに税率が上昇する。年収800万円家庭(夫婦2人)の所得税は現在39万3000円ほどだが、増税されると51万900円と、年11万7900円も負担増に。

 

「コロナ禍に加え、円安や物価高に直面する家計にとって増税は国民生活の破綻を招きます。国民の信を問わずに軍拡のための大増税はまさに政府の暴走といっていいでしょう」(浜さん)

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