従来の学校教育が見直されるきっかけ作った『窓際のトットちゃん』
画像を見る 83年には「山本有三記念・路傍の石文学賞」を受賞。その選定理由は“幼年時代の体験をあたたかいユーモアをもって生き生きと描きあげ、個性を伸ばす教育の大切さをすぐれた作品として表現した”というものだった

 

■“トットちゃん”が描いた時代と真逆の教育

 

一方“受験戦争”という言葉が再燃したのもこのころ。多くのライバルと競い、いかに要領よく細かな知識を暗記するかという、詰込み型の教育が主流だった。

 

「そのような教育現場に疑問を感じていた母親たちにとって、“トットちゃん”で描かれる、個性を重視し、自然と共生するトモエ学園の教育は魅力的でした。管理型の教育でなかったからこそ、『ザ・ベストテン』の司会者として“空気を読まず”に活躍する黒柳徹子さんのような大人に成長できたのではないかーー。いつも通信簿に“落ち着きや協調性がない”と書かれていた子どものお母さんにとっては、励みともなったはず。この本は、それまでの学校教育が見直され始めるきっかけの一つとなったといえるでしょう」

 

その証拠に、当時“管理教育”と盛んといわれた愛知県では、教育関係者からの反対があり、学校の図書館に『窓ぎわのトットちゃん』が置かれなかったことが『おかしい』とニュースにもなった。

 

「現在は“みんなと同じでは、いつかAIに置き換えられる”と考えられ、一人ひとりの個性や自己主張を伸ばす教育の重要性が説かれるようになりました。時代が“トットちゃん”の世界に追いついてきたのではないでしょうか」

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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