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映画『パラサイト 半地下の家族』の受賞ラッシュが止まらない。2019年カンヌ国際映画祭では、最高賞であるパルムドールを受賞。2020年1月6日に発表されたゴールデングローブ賞でも、外国語映画賞に輝いた。2月10日に行われるアカデミー賞授賞式においても、台風の目となることは間違いないだろう。

 

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俳優や監督たちの熱量がほとばしるコメントからは、本作の放つ衝撃がいかに大きなものであるか伝わってくる。

 

2018年にパルムドールを受賞した『万引き家族』の監督・是枝裕和さん(57)は『パラサイト 半地下の家族』の同賞受賞に際し、こんなコメントを寄せた。

 

「観る前の人に、この映画の内容を説明するのは野暮だ。『見ろ!』としか言えないし、『面白い!』としか言いようがない。だから、とにかく見て欲しい」

 

『永い言い訳』の原作および映画監督を手掛けた西川美和さん(45)も絶賛だ。

 

「ポン・ジュノ監督の持つ天才的なグロテスクさと笑いとに、最高の洗練が加わった。これだけ社会の重い病巣を描いているのに、どうしてこんなにも面白く観られてしまうんでしょうか。どんなに斜に構えている人でも、どんなに映画を見慣れていない人でも、五分で目を離せなくなるように作られています。世界中に褒められて当然!」

 

また『天気の子』などを代表作に持つ映画監督の新海誠さん(46)は、昨年11月28日の試写会後にTwitterで感想を残した。

 

「凄い。マスコミ試写であれほど笑いが起きたのも、あれほどの一体感で展開を見守ったのも初めての経験でした。今も思い返して、アニメ映画にもらえるものを必死に探し続けてしまっているくらい刺激的です。できれば友人と観てからソジュを飲みたかったな…笑」

 

俳優・映画監督の斎藤工さん(38)は、公式サイトにコメントを寄せている。

 

「史上最強傑作!! 遂にポン・ジュノは現代映画の到達点を本作でサラッと更新してしまったのではないだろうか。己の現在地は、果たして地上なのか、地下なのか、それとも半地下なのか。観終わってからずっとその疑心に寄生されている」

 

『サマーウォーズ』などの映画監督・細田守さん(52)も、同じく公式サイトでこう語っている。

 

「ものすごいものを観た! 家2軒しか出てこない映画かと思わせて、最後には予想もつかないようなところまで連れて行ってくれる。観た後に誰かと語り合いたくなる映画です。ネタバレ厳禁につき多くを語れないので、とにかくまずは観てください!」

 

しかしまだ観ていない人に魅力を伝えようとすると、どうしても慎重に言葉を選ばざるを得ない。そう、本作は「ネタバレ厳禁」の映画なのだ。今回は、映画のストーリーについての言及を必要最低限に抑えながら、今作のポイントを紹介していきたい。

 

まず、簡単なあらすじから。

 

《全員失業中。日の光も、電波も弱い“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。大学受験に失敗し続けている長男ギウは、ある理由からエリート大学生の友達に家庭教師の仕事を紹介される。身分を偽り訪れた先は、IT企業を経営するパク社長一家が暮らす“高台の大豪邸”。思いもよらぬ高給の“就職先”を見つけたギウは、続けて美術家庭教師として妹ギジョンを紹介する。徐々に“パラサイト”していくキム一家。しかし、彼らが辿り着く先には、誰にも想像し得ない衝撃の光景が待ち構えていた―》(映画公式ホームページより)

 

特筆すべきは、その一切予測不可能な怒涛の展開である。いくら予想しようとしても、豪快に、鮮やかに、そして観たこともない形で覆され続ける。果たして、今作はコメディなのかコメディなのか、サスペンスなのか、ジャンルの分類は不可能である。

 

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そして『パラサイト 半地下の家族』が世界を震撼させている最大の理由、それはポン・ジュノ監督(50)が込めたメッセージである。二つの家庭の姿を通し、不平等な社会の負の側面がスクリーンに映し出される。この映画が鳴らす警鐘は、僕たちが生きる現実世界における問題意識と恐ろしいまでに共振しているのだ。

 

「パラサイト」とは何か。「半地下」とは何か。それぞれの登場人物に、善悪の境界線を引くことはできるのだろうか。加速する負の連鎖を前にして、私たちにできることはあるのか。この映画は全ての観客に、そういった問いを突きつける。

 

普段はあまり映画館に足を運ばないという人にこそ、この映画を観て欲しい。圧巻の132分間を体験できることを、ここに約束する。

 

【プロフィール】

松本侃士(まつもと つよし)

編集者・ライター。1991年生まれ。慶應義塾大学卒業。2014年、音楽メディア企業 ロッキング・オン・グループに新卒入社、編集・ライティング等を経験。2018年より、渋谷のITベンチャー企業にてメディア戦略を担当。「note」(@tsuyopongram_)にて、音楽や映画のコラム記事を毎日投稿中。

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