「鏡に映った自分の後ろ姿を見たら、『膝の裏側や、ふくらはぎ辺りの血管がボコボコしていてビックリした』と言って来院される方が増えています。見た目の問題に加え、多くの方が、夕方になると“むくみ”や“だるさ”に悩んでいます。こうした症状をお持ちの方は“下肢静脈瘤”という病気かもしれません」

 

そう警鐘を鳴らすのは、お茶の水血管外科クリニック院長の広川雅之先生。下肢静脈瘤とは、足の静脈にある“弁”が壊れて、本来心臓に戻るはずの血液が逆流し、血管にたまることで、こぶのように膨らんでしまったり、血管がクモの巣状に皮膚にひろがって見えたりする病気のこと。

 

「下肢静脈瘤は、成人の2人に1人に見られるほど、多いものです。患者数は年齢とともに増加していって、50~69歳では約6割が、70歳以上で約7割が罹患しています。比較的重いタイプにかぎっても患者数は推定1,000万人。女性は男性の3倍なりやすいといわれています」(広川先生・以下同)

 

長年、下肢静脈瘤の治療に携わってきた広川先生は、下肢静脈瘤についてこう話す。

 

「命に関わることはありませんが、進行すると足のむくみやだるさがひどくなったり、こむらがえりが起こることがあります。さらに重症化すると、静脈瘤の部分の皮膚が硬くなって茶色く色素沈着したり、湿疹ができたり、潰瘍になってしまう人もいます。そういう症状に悩んでいる人は、治療を受けてください」

 

それでは、どんな治療法があるのだろうか。

 

「下肢静脈瘤の治療は、日進月歩です。以前は血管を抜き取って静脈瘤をとる“ストリッピング手術”という大がかりな手術が主流でしたが、’14年からレーザーや高周波で血管を焼く“血管内治療”が保険適用になり、普及しました。レーザーや高周波で静脈を焼いている時間は、わずか5分ほど。前後の処置を含めても、治療そのものは1時間程度で終わります」

 

局所麻酔をするので、治療中と治療後の痛みも、ほとんどない。術後はすぐに歩けるので、その日のうちに自宅に帰れるという。

 

手軽に手術できるようになっただけに、「病院選びには、十分注意してほしい」と広川先生。こんな病院は要注意だ。

 

■豪華なインテリアや過剰なサービスが目立つ

保険診断の場合、治療費はどこの医療機関でも基本的に同じ。本来、必要ない治療や高額な自由診療が収入源になっている可能性が。

 

■足をちらっと見ただけで診断を下された

十分な問診や超音波検査がなければ、正しい診断は下せない。最初から、手術ありきの病院である可能性も。

 

■脅すように治療をすすめてくる

積極的に治療が必要なのは、皮膚症状が現れている場合だけ。本人が気にならず、症状がなければ、無理に治療する必要はない。

 

■高額なストッキングの購入をすすめられた

下肢静脈瘤だからといって、必ずしも治療用の「弾性ストッキング」を着用する必要はない。高額な商品をすすめてきたら注意しよう。

 

「ある病院では、『未経験でも3カ月で手術ができるようになる』とうたって、医師の募集を行っていました。経験が少ない医師も多いのです。過去にはその様な病院でレーザー手術を受けて、神経障害になり、足が麻痺してしまった患者が、私のところに相談に来たこともありました。また保険適用になって以降、患者の金銭的な負担が少ないからといって、手術の必要がない軽症の患者に手術をすすめたりする病院も増えています。とくに、下肢静脈瘤の患者は片足だけの手術ですむことがほとんどなのに、両足とも手術を無理にすすめてくるような病院には注意が必要です」

 

こうした被害に遭わないためには、血管を専門にする“血管外科”を受診するか、近くにない場合は、かかりつけ医に相談してみるのがよいという。また、手術という選択肢以外にも、自宅で予防したり、症状を和らげたりする方法はある。

 

「立ち仕事の多い方は、薬局で売っている着圧ソックスをはいてみてください。また1日15分程度のウオーキングなどを行って、血流の流れを促進すると、むくみやだるさの予防や軽減ができます。食事については、むくみの原因となるので、塩分は控えめに。便秘を防ぐために、食物繊維の多いものを含むバランスのよい食事を心がけてください」

 

正しい知識を身につければ、恐れすぎることはないのだ。

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