「どこで感染したのか」と戸惑いを隠せないでいる男性(提供写真) 画像を見る

 

新型コロナウイルスの感染拡大は19日までに15例のクラスター(感染者集団)が確認されるなど、予断を許さない状況が続いている。感染の範囲は中南部から北部にまで拡大。市中感染が広がり、経路不明の事例も増えている。
8月上旬に感染が発覚した農業の男性も「どこで感染したのか」と首をかしげる。男性は今後の仕事に不安を残し、「周りに迷惑をかけていないか」と気に病んでいる。

 

「コロナは都市部での話で、自分が感染することはないと思っていた」。県北部で農業を営む男性はこうこぼした。
今月4日朝、自分の畑でサンドイッチを口にした時に異変を感じた。「鼻が詰まり、具材の味がぼやけて味覚が鈍くなったように感じた」
最初は熱中症を疑った。過去に炎天下での作業を続けて同様の症状に見舞われ、「熱中症の初期症状」と診断を受けたことがあったからだ。それでも「念のために」と地元の診療所に電話し、症状を訴えた。

 

医師からは車中待機を命じられ、体温を測ると39・2度。PCR検査の結果は陽性だった。
軽症とされ、県のコロナ対策本部からは「ホテルまたは自宅での療養」を求められた。
妻子が帰省先から数日後に帰宅予定だったため、ホテル療養を考えた。指定されたのは60キロ以上離れた那覇市内のホテル。移動時に別の人に感染させるリスクを考慮し、結局は自宅療養を選択した。

 

体調の急変はなかったが、自宅から一歩も出られない生活は「想像以上に辛かった」。15日に仕事を再開したが、いまだに感染経路は不明だ。発症3日前、名護市内の居酒屋で会合に約2時間参加したが、男性以外に感染者はいなかった。

 

もう一つの心当たりは、畑に向かう途中に利用するコンビニエンスストア。観光名所に続く道沿いにあり、7月末から観光客で賑わっていた。「マスクをしていない人もいたし、自分もしていなかった」

 

知人は「濃厚接触者」とされ、男性同様に10日間の自宅待機となった。「迷惑を掛けてしまったという思いが強い」
どこから漏れ伝わったのか、男性が感染した話が近隣の地域にも広がっていた。「繁華街に飲みに行っていた」「飲み会でクラスターが起きた」という中傷まがいのデマが、男性の耳にも届いた。

 

周囲の反応が気になり、野菜の出荷作業も普段通りにはできなくなった。
「コロナ前の日常を取り戻すまでには、もう少し時間がかかりそうだ」
男性は諦め顔でつぶやいた。
(安里洋輔)

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