’13年、日本と諸外国の関係はどう動いて行くのか?元外務省主任分析官で、外交評論家・作家として活躍する佐藤優さんが3つの争点を語ってくれた。
「1つめの大きな問題となるのは、慰安婦問題です。第一次安倍政権のとき、米国の下院がこの問題に対し『日本は正式に謝罪するべき』と採決した。これは史上初のこと。この問題に決着をつけることが、日米関係にとって重要なカギとなります」
日本政府はこの問題について、広い意味で軍の関与はあったものの、強制はなかったと強調している。佐藤さんは、対韓国よりむしろ対米関係を左右する重要な課題であるという。
「米国では、この件に関して反日感情が根強いのです。今度こそ、安倍さんをはじめとする保守派の真摯な対応が迫られます」
2つめは、尖閣問題。この問題のキーマンは猪瀬直樹東京都知事であると佐藤さんは言う。
「東京都が集めた15億円の募金で、船だまりを造ったり、ヤギを駆除したりするという案があります。中国は当然、実力でそれを阻止しようとする。そうなると、武力衝突となる可能性が高いと思います」
そして3つめの争点は、膠着する沖縄の基地問題にどう対応していくかについて。
「米軍海兵隊の普天間基地移設を強行すると、流血の惨事になります。沖縄の中ですべての米軍基地は出ていけという動きになると、日米関係の悪化は避けられません」
佐藤さんの分析によれば、世界では新しい棲み分けが進みつつあるという。
「中国は急速に経済力をつけるばかりではなく、軍事力も強大化し、いまの国際社会の秩序を大きく変えようとしています。米国は世界一の大国であることには変わりはありませんが、エネルギー政策で大きく転換していこうとしている。エネルギーの輸出国として、米国がどう変化するかによって、当然、日本の立ち位置も変わってきます」
米国が自前でエネルギーを供給できるようになり、現状の世界展開から手を引くことになると、日本は米国の庇護を失い、その結果、中国へ引き寄せられることに。
「日本は将来、中国の属国のようになる可能性もあります。そうならないよう、いまから中国以外のアジア太平洋地域の諸外国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、チリなどとの関係を強化して、経済の中核化を図るべきなのです」