「11月に入って、来年4月の保育所入所に向けた申し込みが始まりました。働きながら子育てする人にとって、死活問題ともいえる保育所探し、いわゆる『保活』の大詰めです。先月24日には、安倍首相がアベノミクスの第2ステージとして『新3本の矢』を発表。第2の矢に、『夢をつむぐ子育て支援』を挙げています。待機児童ゼロや、幼児教育の無償化拡大を目指すと宣言しました」
こう語るのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。そこで、荻原さんが『保活』の現状を解説。まず、待機児童の動向だ。今年4月の時点での待機児童数は2万3千167人(厚生労働省)。7年連続で2万人を超え、5年ぶりに前年より増加した。
「’14年度中に、約14万人分の保育定員を増やしましたが、それ以上に保育の希望者が増えています。非正規社員が働く人全体の4割に達し、共働きでないと暮らせない方が多いことも一因でしょう。また、待機児童を減らすには、保育所などの増設だけでなく、施設があっても保育士が足りない問題を解決しなければなりません。保育士の責任は重大ですが、平均月収は約21万円と全産業の平均より約10万円も低いのです(’14年度・厚生労働省)。これでは、働く意欲が持てないでしょう」
さらに、今年4月から子ども・子育て支援新制度が始まり、認定こども園を増やすことが掲げられている。認定こども園とは、これまで幼稚園では教育、保育所では預かり保育と分かれていた目的を、両方兼ねた施設をいう。
「ですが、この認定こども園の増加は、必ずしも保育定員の増加にはつながりません。既存の幼稚園や保育所が業態を変えて、認定こども園に移行するケースが多いからです。残念ながら、待機児童が減少する施策は見当たりません」
次に保育料。今年4月からの新制度では、保育料の規定も変わった。保育料は世帯収入によって決まる。これまでは、’11年から廃止になった所得税の年少扶養控除が、まだあるとみなして年収が算出されていた。
「この年少扶養控除のみなし適用が、新制度によって廃止されました。従って、給料が変わらなくても、控除のみなし適用がなくなった分だけ年収が増えた計算になり、保育料が上がった方もいます。ただ、保育料は国が上限を設け、その範囲で自治体が決めます。先の控除のみなし適用も、自治体によって、すでに廃止やまだ継続中など対応はさまざまですし、独自の補助金が出る自治体もあります。詳しくは、保育所のある自治体にお問い合わせください。いずれにしても、無償化とはほど遠い現状でしょう」
また、子ども・子育て支援新制度には、2人目、3人目の保育料軽減が盛り込まれている。保育所の場合、小学校入学前の子が複数いて保育所に通っていると1人目は全額必要だが、2人目は半額、3人目は無料になる。
「安倍政権は、出生率を今の1.4から1.8に上げることを目指しています。そのために2人目、3人目の保育料を軽減するより、結婚しない方、結婚しても子どもを持たない選択をする方などに、1人目を産んでもらえるような施策をとるほうが有効ではないかと、私は思います。安倍首相は保活の現状をわかっているのでしょうか。夢をつむぐためにと放った矢は、現状と逆行しているのではと危惧しています」