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「天気が悪くなると、頭が重い、関節が痛い、古傷が痛むなどの症状が出るのが天気痛。原因は気圧の変化。これからの梅雨どきは要注意です」

 

こう話すのは、愛知医科大学で日本で唯一の「天気痛外来」を開設する佐藤純先生。

 

「いまから3年前、大学が尾張旭市に住む6,000人を対象にした大規模調査で、常に体のどこかに痛みを抱えている人は全体の約4割。そのうちの4人に1人が『天気が悪くなると痛みが悪化する』と答えています。これをもとに試算すると、日本人の10人に1人が天気痛を患っていることになります」(佐藤先生・以下同)

 

この試算を人口に当てはめると、なんと日本全体で1,000万人以上が天気痛患者。まさに花粉症に次ぐ「第2の国民病」と呼べる規模なのだ。

 

天気痛の症状はさまざまだ。

 

【1】頭痛
天気が悪くなると頭がズキズキする。とくに片頭痛の人に多い。

 

【2】首痛
過去にむち打ち症を患った人だけでなく、デスクワークで前かがみの姿勢を長く続けている人も起きやすい。

 

【3】めまい
雨が降る前、立ち上がっただけでふらふらするというのが典型的症状。

 

【4】耳の変調
天気が崩れる前に耳鳴りがしたり、聞こえにくくなったりする。痛みを感じる人もいる。

 

【5】事故の古傷、神経痛
天気によって、昔のケガや手術痕がうずく。神経痛を発症して特定の場所がズキズキ痛む。

 

【6】心の不調
低気圧がくると、集中力が落ちて、気分が落ち込む。不眠、食欲の低下、頭痛などが併せて起こる。

 

「ほかにも気管支ぜんそくやリウマチといった持病が悪化するケースもあります」

 

そもそも佐藤先生が天気痛を研究し始めたのは25年ほど前。名古屋市立病院で「痛み外来」の担当医だったころにさかのぼる。

 

「問診していると『天気が悪くなると痛む』と訴える患者さんが本当に多かった」

 

古来、「雨が降ると古傷が痛む」といわれ、いわば民間伝承のたぐいと思われがち。佐藤先生はこれを最新医学で検証。なぜ気圧が変化すると体調に影響するのかを、気圧室を使って実証実験。結果は思いがけないものだった。

 

「人はにおいや音には敏感に反応します。しかし低気圧が近づく程度の気圧の変化がわかるかどうかは疑問でした。しかしこの実験で、人には気圧の変化を察知する能力があることが証明されました」

 

その仕組みはこうだ。

 

「気圧の変化に関わっているのは耳の奥にある内耳。内耳には体のバランス感覚を保つために外リンパ液と内リンパ液があり、この2つを隔てる膜が気圧センサーになっていると考えられます」

 

天気痛とは、天気による気圧の変化に内耳の気圧センサーが過剰反応。内耳と近接する脳の自律神経(交感神経と副交感神経)にその乱れが伝わり、古傷や持病の痛みを呼び覚ましたり、めまいや気分の落ち込みといった不調を起こすことによるものだ。

 

佐藤先生は10年以上前から、愛知医科大学で「天気痛外来」を開設。

 

「天気痛を訴える人は、性別では女性が圧倒的に多い。また個人の体質や持病にもよりますが、内耳から脳に伝わった気圧の変化で交感神経が活発になる人は古傷が痛んだり、頭痛がする。反対に副交感神経に作用する人は強い眠気や体のだるさを訴えることが多いことがわかってきました」

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