重症者の対応をする医療従事者(写真:共同通信) 画像を見る

2回ワクチンを接種したにもかかわらず、新型コロナに感染するブレイクスルー感染。「2回接種して、油断もなかったのに……なぜ」に、専門医が解説ーー!

 

「9月7日に、福井県で報告された病院クラスターでは、感染者10人のうち、7人がワクチン接種を完了していました。札幌の老人ホームでも、入居者25人中24人がワクチン接種を2回済ませていたにもかかわらず、入居者6人の感染が判明したばかりです」(医療ジャーナリスト)

 

新型コロナワクチンを2回接種してから、約2週間で十分な免疫を得られる。だが、それでもコロナに感染する、いわゆる「ブレイクスルー感染」をする人が急増しているという。

 

いったいどんな人が感染するのか、重症化しやすいのか。専門家に聞いた。

 

【Q1】ワクチンの種類、接種時期との関係は?

 

「米国メイヨークリニックがミネソタ州で、デルタ変異ウイルス流行中に行った調査によると、ワクチンの発症予防効果はモデルナ製が86%、ファイザー製は76%あります。別の研究ですが、アストラゼネカ製は67%と少し落ちています。ただ、あくまで発症予防効果であって、重症感染予防効果は高く、3つのワクチンに大きな違いはないと思われます」(米国立研究機関の博士研究員・峰宗太郎さん)

 

時間がたつとともにワクチンで得た抗体は減ってしまう。

 

「抗体が減るまでには個人差があるものの、2回接種して半年から8カ月後くらいが目安。そのころからブレイクスルー感染は多くなると考えられています。そのため、検討されているのが3回目接種です。イスラエルでは3回目の接種がすでに始まって2〜3割の人が終わっていますが、86%の感染予防効果があるといわれています」(埼玉医科大学の松井政則さん)

 

ワクチンには感染予防・発症予防・重症感染予防の3つの役割があるというが、抗体が減っても、重症感染予防に関しては一定期間、持続するという。

 

「重症感染予防に重点を置くなら、一般の人への3回目の接種は今は時期尚早です」(峰さん)

 

ちなみに、北海道で医療機関に出入りする80代男性が“免疫が上がるから”と、4月から7月にわたって計4回も不正にワクチン接種したことが報じられたが。

 

「抗体がたくさんあるときにブーストしても、意味はありません」(松井さん)

 

【Q2】新たな変異株でリスクは高くなる?

 

従来株に比べて、変異株にはワクチンが効きにくい。ただし、重症化を防ぐ効果は、現在存在している変異株に対しても期待できるという。しかし、さらに変異を繰り返した場合は危険だ。

 

「デルタ、ラムダ、ミューからさらに進んで、シグマ、オメガまで出現すれば、既存のワクチンでは対応できなくなるでしょう。その場合は、現在のワクチンからマイナーチェンジした新しいワクチンが必要になります。mRNAワクチンは比較的スピーディーに開発でき、かつ大量生産できる特徴があるので、対応は可能でしょう」(ナビタスクリニック理事長・久住英二さん)

 

【Q3】いつまで気を付ければいいの?

 

ワクチンを打っても、ブレイクスルー感染のリスクはある。結局、いつになれば、昔のような生活に戻れるのだろう。

 

「ワクチン接種が進むイスラエルでも感染者が増加傾向にありましたので、当面はワクチン接種を終えていてもマスク、密を避けるなどの感染対策は必要です」(峰さん)

 

コロナとは気長に戦っていくしかない。

 

「ブレイクスルー感染しても、重症化するケースは少ないように、ワクチンの効果はあるので、接種率を高めることは重要です。一方、接種率70%で集団免疫が得られると考えられていましたが、90%以上必要との見方もあります。ワクチン頼みではなく、現在、開発が進んでいる複数の治療薬が待たれるところです。ワクチン・治療薬の両輪が動きだせば、新型コロナが“ただの風邪”になる日も近いと思います」(松井さん)

 

まだしばらくは、マスクが手放せない日々が続きそうだ。

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