配偶者控除、専業主婦の年金廃止されると…主婦世帯は年間34.7万円の負担増に
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■働きたくても働けないケースもある

 

配偶者控除自体は、妻が家庭内で家事や養育などの役割の中心となり、夫の収入の獲得に大きな貢献をしているという「内助の功」を評価して’61年に設立されたもの。

 

しかし、國學院大學経済学部の水無田気流教授(社会学)は、若い世代では今後これらの制度の恩恵を受けない世帯も増えると語る。

 

「この制度自体は“サラリーマンの夫の収入が十分にあり、妻は家計の補助的に働く”という戦後に確立した家計モデルが前提。ただ、現在でも女性では非正規雇用が多数派なのは、正規雇用での就業と家事、育児、介護などの両立が困難だからです。

 

さらに若年層の総体的な賃金水準の低下により、30代の男性の収入は、’97年には500万円台の人が最も多かったのが、’07年には300万円台が最多に。今後は、共働きで“壁”を考えずに働かなければ家計を維持できない世帯の増加が見込まれます」

 

その一方で、水無田氏は「制度だけを取り去ってしまえば、特に働きたくても働けない人に負担がのしかかる」と懸念を示す。

 

「専業主婦のなかには、夫の年収が低すぎて保育サービスにすらお金を払えずに働きに出られない人や、子どもが保育所に入れなかったり介護の必要な親を抱えていたりなど、働きたくても仕事との両立が難しいケースも少なくありません。

 

さらに、未婚率や離婚率が上昇するなかで、親の介護をしている未婚者やシングルマザー・ファーザーなどは配偶者控除自体を受けることができないのです」

 

仮に、配偶者控除が廃止になった場合、夫の年収が400万円で所得税率20%の家庭なら、減税されていた7万6千円が新たな負担に。

 

また、第3号被保険者制度が廃止された場合、これまで夫の会社が負担してきた基礎年金の保険料を、国民年金保険料として月1万6千590円を支払わなければならない。年間にすると19万9千80円だ。

 

さらに、年金だけでなく健康保険の扶養制度も廃止された場合、国民健康保険料として年間7万1千900円(新宿区、妻の収入がない場合)を新たに支払う必要がある。単純計算で年間34万6千980円が家計への負担となってのしかかることになるのだ。

 

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