昨年から今年にかけて、人気女性アナウンサーや女優たちが、自身の“黒い感情”を次々とさらけだすと、「闇キャラ」と称され話題になった。容姿にも恵まれ、地位や収入面でも成功したと思われる立場にあっても、自分の存在意義が見いだせない、人生にむなしさを覚える、などと感じる彼女たちの心の内に驚かされると同時に、ネット上でその発言を支持する声の多さから、「心の闇」を抱える人たちが多く存在することも浮き彫りとなった。

 

「“心の闇”は、もはや特殊なケースを指す言葉ではなくなっています。しかし、けっして軽傷というわけではない。うまく表現ができないだけで、そうとうな苦しみを抱える人の数は増えていると思います」

 

そう語るのは、精神科医の名越康文先生。「心の闇」という言葉は、’97年(平成9年)の神戸連続児童殺傷事件を機に世に広まったが、20年以上たった現在はその意味合いも変わり、普通の人が“普通に”心に抱える“生きづらさ”を指すことが多いという。

 

「自分では気に留めていないつもりの小さな苦しさが積み重なり、いつの間にかパンク寸前まできて、自分でも抑えられなくなってしまった、という状態が近いかもしれません。要因はひとつではありませんが、日本人の2~3割が該当する“過剰適応(症候群)”の人は、心に闇を抱えやすい傾向にあります。過剰適応とは、まわりの顔色(環境)が気になり、まわりに合わせようとするあまり、自分を押し殺してしまうことをいいます。日本人ならではの気配り気質とは異なるもので、幼少期に親と無条件の信頼関係が築けなかった、思春期に受けた大きなトラウマから立ち直れないでいるなど、別の理由が存在することが多いのです」(名越先生・以下同)

 

この過剰適応は比較的、女性に多くみられるという。「一般的に女性のほうがコミュニティーへの参加数が多いうえ、社会的な制約もあるぶん、より人の目を気にしてしまうのかもしれません」と、名越先生も、女性が特に心に闇を抱えやすいことを危惧する。

 

「まわりをつねに意識し、まわりに同調しようと気を張った状態は、当然、消耗しやすいといえます。これが長く続くと、自律神経のうちのリラックスをつかさどる副交感神経のパワーがなくなり、心身が緊張した状態から解放されなくなります。すると今度は、質のよい睡眠がとれず睡眠不足になり、心身の疲れもとれなくなるわけです。集中力が落ちて仕事や人付き合いが軽やかにこなせなくなり、自信がなくなり、自分自身を含め、人を信じられなくなってしまう。それでも自分では原因がわからないから“まわりの人のようにうまくやりたいのにできない”というジレンマに陥り、自分自身をより追い詰めてしまうのです」

 

名越先生によると、このような状態は現代医学ではほとんど病名がつかず、東洋医学では「未病」と呼ばれる段階だという。

 

「しかし、心と体は密接につながっているので、いずれは身体や心の病気となって表れる危険があります。だからこそ、未病の段階でターンをかけることが大切なのです。頑張れる力が大きい人ほど、一度病気になると修復に多くの時間がかかります。だから“私は大丈夫”と決めつけず、息苦しいと感じたら、自分を気にかけ、ケアをはじめてください」