「今年3月に厚労省が発表した『日本人の食事摂取基準』2015年版では、初めて高齢者の低栄養などに警鐘が鳴らされました。老化とともに筋肉が衰えることを『サルコペニア』といい、タンパク質不足も関係しています」
そう話すのは、順天堂大学教授の小林弘幸先生。いま、日本人はかつてない“栄養不足”だという。栄養状態は血液中のアルブミンの値で示されるが、これはタンパク質の一種。飽食の時代に意外なことだが、終戦直後の水準より、栄養状態は悪化しているそうだ。とくに高齢者は、低栄養が切実な健康問題に。
「お年寄りが寝たきりになる主な原因は、転倒と脳卒中。東北大学の研究によると、お肉を食べていない人の転倒リスクは、食べている人のなんと2.8倍とのことです。タンパク質不足による筋力低下が引き金といえるでしょう」
筋肉は30代をピークに徐々に衰え、40代の4人に1人がサルコペニアの予備軍ともいわれている。また、月経によって失われるのは鉄分に限らず、タンパク質も同様だ。そこで、小林先生は「老いも若きも、男性も女性も、夏バテ対策も兼ねて、いまこそお肉をしっかり食べたいですね」と、肉食健康法を勧めている。肉に含まれる良質なタンパク質は、血液にもうれしい効果があるそう。
「血管を強化するエラスチンや、血圧を下げ、脳卒中の発症リスクを下げるリジン。アルギニンは、血管を広げて血液を通りやすくしたり、赤血球を構成するヘモグロビンを合成するなど、その働きもさまざまです」
牛、豚、鶏、いずれも良質のタンパク質が豊富に含まれている。
「牛肉には増血作用の高いビタミンB12が、豚肉には疲労回復に効果的なビタミンB1が多いなど、種類や部位によって栄養の特徴が分かれています。その日の気分や体調に合わせて、いろいろ食べるのがいいでしょう」