「検査精度は約80%、認知症が血液検査でわかるようになったらしい。不安な読者に代わって受けてきて!とくにメタボは危ないみたいヨ」
最近、人の名前がなかなか思い出せないアラ還メタボ記者Aに、編集Kから問答無用の指令がふってきた!
厚生労働省のデータによると65歳以上の認知症の人は約462万人(’12年)。’25年には700万人超、将来は65歳以上の5人に1人が認知症になるとの予想だ。認知症は、肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病も大きな要因。とくにアルツハイマー型認知症は、女性のほうが発症の確率が高いという。
血液検査で認知症予備軍であるMCI(軽度認知障害)の発症リスクを判定するのが「MCIスクリーニング検査」。筑波大学の研究チームによって開発され、本格的に実用化されたのが今年4月。
実施機関(株式会社MCBI)に問い合わせると、費用は保険適用がなく2万〜3万円ほど。全国約500カ所の医療施設で検査が受けられる。現在までの受診者は約千人。女性のほうがやや多く、50〜70代が約80%を占めている。
さっそく都内で最も早く検査をスタートした「金内メディカルクリニック」(新宿区)で検査を受けてみた。まずは電話で予約。検査前日にお酒は控えるべきかなどの注意点を尋ねたが、ふだんのままでよいとのことだった。
そして当日−−。ドキドキしながら診察室に入ると、笑顔の看護師さんが、注射器を手に迎えてくれた。「はい、採血をします。お楽になさってくださいね」と約10ccの血液を採り、ものの10分で終了した。それだけ?と拍子抜け。検査費用は2万千600円なり。
採取した血液は検査機関に送られて約2週間後に結果が戻ってくる。その判定に応じて医師の説明を受けるのだ。だだ、もしそこで、MCIと判断された場合は、今後の治療方針告知も……。
検査の研究・開発に携わった朝田隆先生(筑波大学名誉教授)に、なぜ血液検査だけで認知症のリスクがわかるのか、解説してもらった。
「認知症で最も多いのが『アルツハイマー型認知症』で、日本の認知症患者の約70%を占めるといわれています。MCIスクリーニング検査は、その前段階であるMCIのリスクをはかる血液検査です。アルツハイマー型認知症の原因についてですが、まずアミロイドベーターペプチドという特殊なタンパク質が蓄積して大脳皮質に老人斑というシミができます。それが脳の神経細胞を傷つけて、記憶障害が起きると考えられています。体内にはアミロイドベーターペプチドの働きを抑えるタンパク質が3つあるのですが(補体タンパク質・アポリポタンパク質・トランスサイレチン)、この増減を調べることでMCIのリスクを判定できるわけです」
つまり、原因となる物質をやっつけるタンパク質が減少していればアウト……。記者がビビりまくっていると、「いまのところ普通にきちんと会話をしていますし、きっとAさんは大丈夫ですよ」と朝田先生から優しい一言。でも結果が出るまでは眠れない日々が続いた……。
2週間後、検査結果が届いたとの連絡を受け、再び金内メディカルクリニックへ。検査結果はA〜Dで判定され、検査機関(株式会社MCBI)によるおよその結果の内訳は、A:20%、B:50%、C:20%、D:10%だ。
「結果はA、問題ありません。よかったですね」と担当医の木内麻里先生に言われて安堵!でも全体の8割を占めるB以上の方にはどんな説明をしているのか?
「Bの方は、MCIリスクがありますから認知症予防のアドバイスをします。有酸素運動や食生活の注意など、健康的な生活が大切です。Cの方は、生活習慣病の治療も考えます。糖尿病患者様にはアルツハイマーの合併症が多く見られますから。Dの方は頭部MRIや、脳の血流量を量る検査など2次検査が必要。専門病院をご紹介しています。D判定の方は5〜7年以内に50〜70%が発症する可能性があります」