「『健ちゃん、もし私が逝ったときには涙を流す葬式じゃなくて楽しい葬式にしてちょうだいね。あんたは話が上手だから、葬式でも面白い話をして笑いをとってね』母は昨年、そう僕に話しました。ユーモアがあって優しい母らしいなって思いました」
本誌にそう語るのは、1月20日未明、老衰のため他界した柴田トヨさんの長男・健一さん(67)。トヨさんは調理師の夫と死別後、90歳を過ぎてから、健一さんの勧めで詩作を始め98歳で『くじけないで』(飛鳥新社)を出版。160万部のベストセラーとなり、100歳を超えて第2詩集『百歳』(同出版社)を刊行。101歳の大往生だった。
24日、栃木県宇都宮で行われた葬儀には100名が参列し、その旅立ちを惜しみつつ、口々に「ありがとう!」と声をかけた。参列者への御礼状には、トヨさんの遺作となる未発表作品が掲載されている。
皆様に
お迎えが 何回か来たけれど 口実を作って お断りしてきたの
でも私も101歳 次は無理かもしれない
私のお葬式 たくさんの人が 来てくれるかしら
その時は悲しまないで
トヨさん がんばったね
って 声をかけてください
その言葉を励みに 天国でもしっかりと暮らしてゆきます
皆様のご多幸を 日射しとなり そよ風になって 応援します
今まで ありがとうございました 倅夫婦をよろしくお願いします
「これは母が亡くなる半年前、101歳になったころに書いたものです。『いつお迎えがくるかわからないから準備しないとね』って。もう起き上がれなくなった母の声を口元に耳を近づけて聞き取りながら2人で作った最後の作品になりました。母は自分が天国にいったならば被災地の人を励ましたいって言っていましたから、そよ風になって誰かのためになっているかな。天国で休むのではなくて母らしく頑張ってほしいなと思います」(健一さん)