いま、絵本業界に続々と新人が誕生している。絵本といえば、ほぼ定番が当たり前。’60年代ころに発表された作品が、親から子へ、子から孫へ、と読み継がれた超ロングセラーが少なくない。ところが最近、”ちょっと畑違い”の分野から絵本を出版する人が増えているのだ。

 

『ことば絵本 明日のカルタ』(日本図書センター)は倉本美津留・作。『ダウンタウンのごっつええ感じ』など人気番組を手がけてきた放送作家だ。’12年10月に行われた子どもカルタ大会のために作ったカルタを絵本にしたもの。

 

「親子に向けて番組を作っているなかで、われわれは悪い既成概念に縛られていることが多いと、よく思いました。それで子どもには『大人の言うことをすべてうのみにしなくていい』と言いたかったんです。だから、親がびっくりするようなことも書きました」(倉本さん)

 

たとえば「ふ=普通じゃない!といわれたらチャンス!」。解説には「ジョン・レノンも岡本太郎も坂本龍馬も、新しくておもしろいことを生み出した人はだれもが最初は『普通じゃない!』と言われてきた。キミのオリジナリティは宝物なんだよ」とある。どれも大人からみれば挑発的で革新的だ。

 

アート・ユニット「明和電機」の土佐信道さんが絵を担当したのが『すーびょーるーみゅー』(クレヨンハウス)。マンダラのような絵に、詩人・谷川俊太郎さんが呪文のような言葉を合わせる。たとえば「かぽ」と唱えると「すーごーはーしー」と続いて火が燃え上がる。音読すると独特なリズムのある言葉と絵がマッチして、大きな世界の広がりを感じる。

 

爆笑問題の太田光さんの話に、影絵作家の世界的巨匠・藤城清治さんが絵を描いてできたのが『絵本 マボロシの鳥』(講談社)。一度手に入れた大切なモノを手放しても人生は続くし、その大事なモノを通して世界がつながっていることを教えてくれる大人の絵本だ。

 

画家の佐久間真人さんの絵に、ミステリー作家の森博嗣さんが物語を書いたのが『失われた猫』(光文社)。建築家の猫と革命家の猫が生きる意味を問う哲学的な大人の絵本。

 

北野武さんも過日『ほしのはなし』(ポプラ社)という絵本を初めて発表した。おじいさんと孫の少年が満天の星の下で語り合う作品には「みんな自分の星を持っていて、いつだってひとりじゃない」というメッセージが込められる。

 

文字と絵が化学反応を起こすことで繰り広げられる深遠な世界に、子どもも大人もどう反応するのか。”ちょっと畑違い”な人たちが作る絵本に興趣が尽きない。

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