《中山秀征の語り合いたい人》、今回のお相手は、経験に裏打ちされた歯に衣着せぬ力強い言葉で、メディアから注目を集める“女装の教授”安冨歩先生(51)。東京大学東洋文化研究所の教授が、“男装”をやめたワケを語ってくれた。
中山「先日、テレビで初めて拝見しまして、その独特な雰囲気とお話がすごいインパクトでした。先生、これは女装といったらいいんですか?」
安富「自分の感覚としては、男物の服を着ていたときよりも今のほうが自然なんですよ。だから特別“女装”をしているのではなく、ごく普通にこういう格好をしているという感じですかね」
中山「きっかけって何だったんですか?」
安富「もともとウエストがすごく細かったので、学生のころはパンツからシャツが知らぬ間に出てしまって『だらしない!』とよく母に怒られていました。太ってからは問題なく男物がはけたんですが、昨年10キロ痩せたらこれまでの洋服がブカブカになって。体に合うサイズの物を買いに行ったものの、男物だとやっぱりウエストが合わない。そうしたら私のパートナーが『女物をはいてみたら?』と提案してくれ、はいてみたらピッタリ合ったんですよ。しかも、単に体に合うだけではなく、ものすごい安心感みたいなものもあって」
中山「へえ〜。自然な流れで」
安富「はい。しばらくは、女物だけど男っぽいものを着ていたんですが、どうもそういうことではすまない気がだんだんと強くなってきて。それで女らしい服を着たり化粧をしてみたらもっと心が落ち着いたんです」
中山「ちなみにパートナーは女性の方ですか?」
安富「はい」
中山「先生がどんどん女物を着るようになったことへはどんな反応だったんですか?」
安富「私がこういう格好をしていると近所の人が気持ち悪がったりして、彼女も困るんだけど、それ以上に私の心が安定したことのほうがはるかにいいって言いますね」
中山「世間がどう見ようと2人でいる空間は楽になった」
安富「アハハ。そういうことです。研究者として成功する人間って日常生活がどこかおかしい人が多いんですよ。極端に片付けられなかったり、物忘れが激しかったりとか。私の場合は興味があることについて話し始めると、相手が聞いていようがいまいが無限に同じテーマについて話し続けてしまうところがあって。それがこういう服を着始めたらずいぶんとよくなっていきました」
中山「なるほど。無理して女物を着ていたらそうはならなそうですね」
安富「ええ。反対に、無理があったのをやめたんです」