「『マタハラ』という言葉の発端は、’09年に出版された杉浦浩美さんの著書『働く女性とマタニティハラスメント』です。’13年には連合が『妊娠経験のある働く女性の、4人に1人がマタハラ被害を受けている』と発表しました。マタハラはセクハラ、パワハラと合わせて3大ハラスメントとなっています」

 

そう語るのは、マタハラ被害者を支援する「マタハラNet」代表の小酒部(おさかべ)さやかさん(38)。彼女自身、’13年はマタハラ被害を受ける真っただ中にいた。

 

都内の企業で契約社員として働いていた小酒部さんは、妊娠中にもかかわらず業務が多忙を極め、2度の流産を経験してしまった。2度めの妊娠では「切迫流産の危険性があるので休みたい」と会社に掛け合ったが、退職勧奨を受けた。さらに「仕事に穴をあけられて迷惑だ」「権利ばかり主張している」など、心ない言葉を浴びせられ続けたという。

 

 

この体験を無駄にしてはいけないと、小酒部さんは’14年7月「マタハラNet」を設立。彼女にとって当面の課題は、女性側の意識改革だ。

 

「相談で多いのが『これはマタハラですか?』という内容です。つまり、女性はこれがハラスメントなのかどうかさえわかっていないのです。自身が不快に思ったり、傷ついたりしたら、それはハラスメントだと自覚すること」

 

小酒部さんは6月29日、都内のホテルで開かれたパネルディスカッションに参加。在日米国商工会議所が主催したこのイベントには、安倍晋三首相も出席していた。ディスカッションの席上、小酒部さんは安部首相に、マタハラ防止への国の取り組み強化を直訴した。

 

「子供を産み、働き続けたい。日本では、そんな当たり前の希望がかなわない状態が続いています。いまだに、第1子の妊娠を機に、6割の女性が仕事を辞めています。今の日本は“産ませない社会”です。

 

折しも安倍政権は「すべての女性が輝く社会」を掲げている。700人以上の参加者を前に、首相はこう返答した。

 

「社会を変えていかないと、子供を産み、育てながら仕事ができるという環境は出でこないと思っています。今日は新たな宿題をいただきましたので、全力で取り組んでいきたい」

 

小酒部さんは言う。

 

「『よく、はっきりと(首相に要求が)言えましたね』と聞かれましたが、私が言わなきゃ始まらないですから(笑)。だからみなさんも、ハラスメント被害にあったとき、『声を上げたら職場で不利な立場になる』と思わないでほしいのです。個人的なわがままとも思わないでほしい。これは会社にとって、多様性を受け入れるチャンスでもあります。マタハラ被害のない社会にして、次世代につなげていきたいのです」

 

ほかのハラスメントに比べて、受ける側も「当然」と思ってしまいがちなマタハラ。おかしいと思ったら、それを言葉にする勇気を持とう。