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「私自身がね、『そんなこと本当にあるんかな!?』と、いまでも驚いているんですよ。だって、お医者さんが手術でその方のおなかを開けてみて、諦めて何もせずに閉じたって。そういう人なんですから」

 

こう言って、優しくほほ笑むのは、宮城県蔵王町に暮らす図師花窓さん(71)。図師さんが「驚いている」と話すのは、いまから20年近く前に、末期がんで余命3カ月と宣告された、当時60代になったばかりの男性のことだ。

 

「そのとき、お医者さんは『がんが散らばっていて手の施しようがない、会わせたい人はなるべく早く呼ぶように』と言ったそうです。もう、いつ亡くなってもおかしくない状態だったんですね。でもね、その方のご友人に頼まれて、私が祈祷して、菩薩さまから告げられたお言葉を伝えたんです。そうしたら……その方いまもご健在なんです。80歳になったいまも、元気に毎日、畑仕事をしているんです」(図師さん・以下同)

 

にわかに信じ難い話だが、高い霊力を持つ図師さんの周囲には、じつはよくあるエピソードの1つにすぎない。図師さんは蔵王連峰のふもとにある「ひふみ龍峯院」で、約20年にわたって延べ2万人以上の相談者を、ほぼ無償で霊視しては救っている。霊視の方法は、相談者に名前と生年月日を尋ね、数珠を手に目を閉じ、手を合わせゆっくり念じる。数分後、図師さんは静かに瞼を開け、便箋の上でさらさらと筆を走らせ始める。

 

「ある菩薩さまからのお言葉なんです。文字が浮かんで見えることもあれば、お声が聞こえてくることもあります。私はその見えた文字や聞かされたお言葉を、そのまましたためるだけ。こうして書いたものを相談に来られた方と一緒に読み解いていくんです」

 

そこには、相談者がいままさに抱える悩みへの回答や、これからどうすべきかの助言が綴られているのだ。人づてに図師さんの高い霊力の評判は、どんどん広がっていき、日本全国から依頼が舞い込むようになった。

 

「なかにはお礼といって大金を積まれた相談者の方もいました。でも、私はそんな大金をいただきたくて、菩薩さまの言葉を届けているんじゃありませんから。ごくごく、ほんの一部だけをありがたく頂戴して、残りの大半はお返ししました。そんな大金を受け取って万一、謙虚な気持ちをなくしてしまったら、きっと菩薩さまのお声は、聞こえなくなってしまうと思います」

 

先行きの見えない現代。「菩薩さまのお言葉を胸に、少しでも不安を和らげ、前を向いて」と図師さん。その目には優しい光が宿っていた。

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