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’17年10月、米国ハリウッドの大物映画プロデューサー・ワインスタイン氏によるセクハラ疑惑が報じられたのを受け、女優のアリッサ・ミラノが、同様の被害を受けたことの女性たちに向けて、「#MeToo(私も)」を合言葉に名乗りを上げるようツイッターで呼びかけた。

 

これに応え、有名スターたちだけでなく一般人も続々と行動を起こし、やがて世界的なムーブメントになった。

 

日本にも瞬時に波及。「#MeToo」運動をきっかけに、政界、教育界、スポーツ界から元NHKの看板アナウンサーの事件まで、押さえ込まれていたセクハラ告発が噴出。長らくセクハラ後進国に甘んじていた社会が、「絶対にNO」と認識を変えた。

 

「昨年10月の『Black Box』の出版を機に、アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』はじめイギリスのBBCやフランスなど海外メディアからの取材が殺到しました。『#MeToo』運動のうねりのなかで、各国の女性が声を上げ始めていますが、やはりアジア圏からの実名での声はまだ少ないからでしょう」

 

こう話すのは、元TBSテレビ報道局ワシントン支局長の山口敬之氏からのレイプ被害を記者会見で訴えたジャーナリストの伊藤詩織さん。著書『Black Box』(文藝春秋)も出版され、“顔の見える”被害者の訴えに社会的関心が集まっている。

 

「運動の発祥の地のアメリカは当然として、私が驚いたのはスウェーデンの反響のすさまじさ。人口はそれほど多くないのに、インタビューが掲載されたとたん、多くのメッセージが私の元に届きました。激励に加えて、同じサバイバーの方からの『勇気をもらった』という声も多かった。わざわざスウェーデンから日本の性犯罪救済センターに寄付を送ってくれた方もいました」(伊藤さん・以下同)

 

伊藤さんがインタビューのなかで、「日本では性暴力救済センターやスタッフの数が足りていない」と話しているのを読んでくれての行動だった。

 

「私は、自分が性被害に遭って以来、海外の性犯罪被害のサポート体制を取材し続けています。特に、イギリスのサポートの厚さには驚かされることの連続でした。現地の警察では、日本と違って、性犯罪専門のトレーニングを受けた捜査員がいます。しかも、ほとんど女性だから話しやすい。人形を相手に、被害状況を再現させられるなどの、セカンドレイプに当たるようなことは決して行われません。イギリスでは、被害者が事件の状況を説明するのは最低限少なくし、大体3回にするように努力しているそうです」

 

1度目は罪名を決めるために概要を、2度目は捜査のためにビデオカメラの前で、そして3度目が法廷だ。

 

「また、性犯罪救済センターなども、おもに寄付などで運営されてきた日本とは違い、政府が資金を出しています。ここでは被害届を出すかどうか決めていない段階でも、捜査員が匿名で話を聞いてくれます。そのうえで、どんなサポートを受けられるのかアドバイスをもらえます」

 

一度、話ができたことでとハードルが下がるのか、その後、被害届を出す人は約7割にも上るという。

 

「性被害を受けたあとのPTSDは私も体験していて、加害者と同じ背格好の男性を見ると体が震えたり、彼が働くオフィスの近くに行くことも怖くて、仕事に支障をきたしたりすることもありました」

 

イギリスでは、そうした性犯罪を受けたあとの精神的なケア、いち早く社会に復帰できるようにサポートしてくれる体制が整っているそう。

 

「大学のキャンパス内でレイプされたある女子学生は、大学に通えなくなり、単位を落としたんですが、スタッフが代わりに大学側に説明して、再度テストを受けられるようになりました。また、大学から紹介を受けて入居したアパートも追い出されそうになりましたが、それも交渉してくれたそうです」