「円安・株高のアベノミクス効果でしょう。自動車、電機などの製造業を中心に、今年の春闘では労組の要求に対して満額回答が目立ちましたね。また、円安の恩恵を大きく受ける輸出関連企業だけでなく、政府の賃上げ要望に応えるかたちで、小売り、流通企業でも賃上げの動きが顕著に見られました」

 

そう語るのは、経済アナリストの木下晃伸さん。みずほ証券が4月3日に発表した予想によると、民間企業のボーナス平均支給額は前年夏より1.6%増える見通しだという。アベノミクスの恩恵を最も受けているのが自動車業界。夏のボーナスで見ると、ホンダが108.5万円、トヨタが102.5万円、日産が102万円。これに三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行のメガバンク3行が続いている。

 

安倍政権では円安を是正することも目標とされており、急激な円安で輸出業は大きな恩恵を受けている。しかし、原料を輸入に頼る食品業界などは、逆にコストがかさんでいる。日本ハムやキリンビールなど大手食品メーカーが加盟する労働組合『フード連合』の担当は「食品業界は原料輸入などで円安の影響をモロに受けますので、全体的な傾向として横ばい、よくても微増といった状況です」と話している。

 

今回、大きく明暗を分けているのが電機業界だ。金額アップなのは日立製作所。逆にプラズマテレビの失敗で業績不振がつたえられるパナソニックは、60万円とボーナスを減らしている。苦境となったのは、半導体大手のルネサスエレクトロニクス。同社は40歳以上の総合職を対象に3千数百人の早期退職の実施を発表。人員削減の総数は1万人を超える見通しで、夏のボーナスもゼロで労使は合意した。

 

燃料を輸入に頼る電力業界は4月から電気料金を値上げ。それでも、厳しさには変わりがない関西電力の労組は今夏のボーナス要求自体を見送った。これは’53年の労組結成以来、初めてのことだという。さらに基本給の5%程度のカットも決めている。前出の木下さんは、改めてこう語る。

 

「今年は突如広がったアベノミクスの賃上げムードで無理してでもボーナスアップした企業が多く、来年以降の見通しは立っていない企業が多いです。今年のボーナスがよくても、来年は、また逆戻りと言う企業が多いのではないでしょうか」

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