「地震で予期しない揺れ方をしたときに、大きなトラブルが生じる可能性は否定できません。そんな重大なことなのに、15年以上に渡ってデータ改ざんをしてきた。企業の倫理観が著しく欠如していると言わざるをえません」

 

違法建築の問題に取り組むNPO法人「建築Gメンの会」の大川照夫理事長がこう語気を強める。免震・制振装置のオイルダンパーの国内トップシェアをほこる部品メーカー「KYB」。同社と子会社によるデータ改ざん問題で日本中に“激震”が起きた――。長年にわたりデータを改ざんしたオイルダンパーが使われている建築物は全国で987件にのぼる。

 

「基準に満たないオイルダンパーを使うことは非常に問題です。建物は免震装置が働いたことを想定した上で、柱や梁の太さなどを決めて設計していきます。耐性データに疑いのあるオイルダンパーを使った場合、想定よりも揺れ幅が大きくなったり、揺れる時間が長くなったりする恐れも。建物全体に影響する可能性があるのです」(大川さん)

 

19日には、KYBは所有者の了解が得られたという70施設を公表(表参照)。しかし、全体のわずか7%のみ。不特定多数の人たちが利用する役所や官公庁の建築物だけが並んでいる。さらに不正の疑いがあるオイルダンパーを使っていると報じられたのは、赤煉瓦の東京駅の「丸の内駅舎」、都心のランドマーク「東京スカイツリー」、大阪のシンボル「通天閣」、東京五輪の競技会場の「五輪水泳センター」など、たくさんの人が集まるスポットが少なくないのが気がかりだ。また「浜岡原発」の非常用ガスタービン用の建物、「伊方原発」の事務所棟でも使われているとされ、懸念が広がっている。

 

「世間の不安を払拭するためには、庁舎だけでなく、人が多く集まる場所や医療や文化などの施設名もすみやかに公表して、迅速に対応をするべきです」(大川さん)

 

耐震技術に詳しい名古屋大学の教授で、福和信夫・減災連携研究センター長も言う。

 

「免震用のオイルダンパーは基準値の上下15%の誤差が認められています。多少の誤差を想定してゆとりある設計をしているはず。問題のオイルダンパーを使ってもすぐに危険というわけではありません。しかし十分なゆとりを持たずに設計した建物があれば、揺れがおさまらずに周囲の地盤に衝突するなどの深刻な事態が起きかねません」

 

国土交通省は「国民の信頼を揺るがした」と言う一方で、第三者による検証をしたことを受けて「倒壊する恐れはない」と強調しているが……。前出の大川さんもこう指摘する。

 

「そもそも倒壊しなければいいというのは大前提の話。免震装置に求められているのは、地震の大きな揺れを抑え、物が倒れたりするリスクを下げること。想定よりも物が倒れやすくなり、その下敷きになり、負傷したり亡くなったりすることも考えられます。また、医療施設に多く使われているのが気がかりです。たとえば手術中に地震がおきたとき、免震装置がしっかり働けば、医師は手術が続けられたのに、それができなくなってしまう。そんな事態が起きることだってあるのです」

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