「前の旦那さんとの間に子供が生まれたときは、『生まれたよ!』と言って挨拶に来ました。 うちの商店で万引した人を見つけたときは教えてくれたり、正義感の強い子だと思っていました。でも、まさかあの子がね……」
こう語るのは、神奈川県大和市で、次男の雄大くんを殺害した容疑で逮捕された上田綾乃容疑者(42)の実家近くに暮らす知人だ。
上田容疑者は’19年8月に、当時7歳だった雄大くんの鼻や口をふさいで窒息させ、殺害したとみられている。
「雄大くんは、虐待を疑った児童相談所に複数回保護されています。上田容疑者には、前夫との間に長男と長女が、逮捕時点で同居していた男性との間には、雄大くんと三男がいました。
長男は’02年11月にミルク誤嚥による窒息で、長女は’03年9月に乳幼児突然死症候群で死去。’17年4月に亡くなった三男も死亡時の状況が雄大くんのケースと酷似しているため、警察は3人の死と事件との関連を調べています」(県警担当記者)
上田容疑者が暮らしていたアパートの玄関前には、「うえだゆうだい」と書かれた鉢植えがあった。
雄大くんが夏休みの課題で朝顔の観察でもするためだったのだろうか。雄大くんが亡くなったのは、朝顔の花が開くころだった。
鉢植えは“愛息の遺品”のはずだが、2年半以上たったのに、土の汚れがついたままだ。スプレー缶などが入った状態で、無造作に放置されていたーー。
「以前にお子さんがいたことは知っていました。“お子さんは?”と聞いたことがありましたけど、『ちょっと……』と言うだけで、何か話したくない事情があったのかなと思いました。亡くなっていたとは知りませんでしたよ。ご近所とトラブルを起こすこともない人でしたし、事件に驚くばかりです」(隣人の女性)
上田容疑者は、隣人ばかりか親族にも、子供たちの死を悼む様子は見せなかった。
「20年以上前に綾乃の両親が亡くなって以来、近くに住んでいたのに、あの子は私たち親戚とも距離を取ってしまいました。だから、あの子の結婚や出産、ましてや子供たちが亡くなったことも知りませんでした」(親族の女性)
上田容疑者に対して、行政側は「代理ミュンヒハウゼン症候群」の疑いを指摘していたことが明らかになっている。『子どもを攻撃せずにはいられない親』(PHP新書)などの著書がある、精神科医の片田珠美さんはこう話す。
「この病気の特徴は、周囲の気を引くため、“代理”として子供を傷つけること。ただ注目や同情を集めるのが目的なので、死に至らしめるケースはむしろまれです。
一方で上田容疑者には、罪悪感や後悔の念、同情などが欠如しているように見えます。精神医学で『ゲミュートローゼ』と呼びます」
現時点で、容疑を否認し続ける母親に玄関の鉢植えが訴える“声”は、聞こえているのだろうかーー。