これといった原因はないのに最近、気分がうつうつする、体調が悪い、ということはないだろうか?とくに春先になるとこんな症状になる人が増えてくる。ひょっとしたらそれは自律神経の乱れかも……。
そこで自律神経の乱れに関する注意ポイントを、東急病院健康管理センター所長・同病院心療内科医長の伊藤克人先生に教えていただいた。
ストレスは「心」が感じるだけでなく、「体」でも感じるという。暑さ、寒さは体で感じるストレス。どちらも交感神経が優位になる。寒いときは血管を収縮させて体温を守ろうとし、逆に暑いときは発汗を促して体温を下げる。しかし、春は寒暖差が大きいため体が気温差というストレスに対応できず、体温調節が追いつかなくなるのだ。それでも短期間で自律神経のバランスが調整されれば体調不良も解消できるが、春は入学、卒業、就職、転勤、引っ越しなど環境の変化によるストレスも重なる。そのため、症状が長引く人が多いのだという。
梅雨時はじめじめとした湿度の高い日が続く。この時期のうつうつとした気候は、うっとおしさや不快感といった情動の変化をもたらし、自律神経が乱れる原因。春先の不調を持ち越す人もいる。注意が必要だ。
夏は冷房の効いた室内と暑い部屋への出入りが増える。外気と室内の温度差に体がついていけないことから起きる自律神経失調症がある。体温調節機能が対応できる温度差は5度まで。それ以上は体に負担をかけるので、夏も防寒対策が必要だ。
変化に対応できる体になるにはどうすればいいのか?まず日ごろから積極的に屋外へでて、皮膚や気道を外気に触れさせると、自律神経の切り替え能力が活性化するとのこと。運動や半身浴などで体を温め、汗をかくと自律神経のバランスが整うそう。また、ふだんから冷たい食べ物や飲み物は控え、野菜は加熱したり、お弁当にはインスタント味噌汁などをプラスすることで、自律神経のバランスが崩れ冷えや血行不良を起こすのを防ぐことができるという。
人間は自然界のリズムに同調した「生体リズム」を身につけている。自律神経はそれに合わせて動いているので、リズミカルに生活すると自律神経はバランスよく働くもの。ポイントは24時間の中で睡眠、食事、休息、通勤、仕事や家事など自分なりのリズムを作ろう。ただし、“規則正しく”にこだわりすぎるとストレスにもなる。ときには睡眠不足や運動不足、食事が不規則になってもあまり気にしないこと。
「人は不快感をもつと、なんとか不快な感情を取り除こうと考えます。そんなときに、不快な気分は感じたままで、今、目の前にある、やらなければいけない仕事や家事を淡々とこなしてみる。初めはつらくても目の前のことに集中しながら時間がたつのを待てば、いつしか不快な気分も消えて、気持ちが楽になっていくものです」(伊藤先生)