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ちょうどいまの時期は、冬の寒さでこわばり「肩こりが悪化した」と感じる人も多いだろう。また「肩こりのせいで頭痛やめまいが……」という話を聞いたことがある人も少なくないのでは?

 

でも、ちょっと待って! そのつらい“肩こり”は、じつは“首こり”の可能性が高いのです!

 

「悪化することで頭痛やめまいを引き起こすというのは、肩こりではありません。それは“首”がこっているのです」

 

そう語るのは、40年以上首の研究と治療にあたってきた、松井病院、東京脳神経センター理事長の松井孝嘉先生。40年以上にわたり“首”の筋肉に着目し続けてきた松井先生によれば、こうした“首こり”の患者は年々増えているという。

 

「“首こり”の主な原因は2つ。ひとつは『長時間うつむいていること』で、もうひとつは『むち打ちの既往があること』です。なかでも近年増加しているのは前者です。パソコンやスマホの普及によって、この10年ほどで“首こり”の患者さんは増えたと感じています。とくに女性は、もともと男性より首の筋肉量が少なく、首がこりやすい傾向があります。家事や育児は下を向いて行うものが多いので、子育て経験者の多くは、首がこっていると考えられます」

 

では、実際にうつむいていることでどれだけ首に負担がかかるのだろう?

 

「人間の頭の重さはだいたい4〜6キログラム。ボウリング玉と同じぐらいで、首や肩の筋肉は、寝ているとき以外は常にこれを支え続けています。うつむくことでこの負荷は倍増。頭が前に落ちないように、首の後ろ側の筋肉がずっとひっぱり続けることになるためです。たとえば、15度傾くだけで首の筋肉への負担は約2.7倍に増加。45度、60度と深くうつむけば、5倍以上の負担がかかることもあり、当然、首の筋肉は酷使されるというわけです」

 

こうしたうつむき姿勢を続けていることで、まず発症するのが「首こり病(頸筋症)」。

 

「これは、首の筋肉に疲労が蓄積し、筋肉痛やハリを起こしている状態のこと。顔や頭を動かすと痛みが生じたり、うまく動かせなかったりしますが、この時点ではあくまで『筋肉の疾患』。そのため、治療も鍼灸や温灸などが中心となります」

 

しかし、この「首こり病」を放置してしまうと、悪化して「頸性神経筋症候群」に。“首こり”の本当の恐ろしさはここからだ。

 

「首の筋肉に異常をきたし伸縮性を失うと、頸椎を通る自律神経が圧迫され、自律神経が不調を起こします。このように、首こりがもとで神経に異常をきたすのが『頸性神経筋症候群』です」

 

「頸性神経筋症候群」になると、本来は30〜40度湾曲しているはずの頸椎が真っすぐになってしまうことが多い。最近では「ストレートネック(別名/スマホ首)」と呼ばれることの多い症状だが、松井先生は30年まえにすでにこの兆候を発見し、「ストレートサイン」と名付けていたという。

 

「当時私はむち打ち症(頸椎捻挫)の治療と研究を行っていましたが、むち打ち症に起因する症状の多くが、めまいや頭痛といった、自律神経失調による不定愁訴と同じものだと気づいたのです。さらに、患者さんのX線画像を見ても頸椎そのものに損傷は見られず、『ストレートサイン』は骨の異常が引き起こす症状ではないこともわかりました。このことから、首の筋肉の疲労が、自律神経失調の大きな原因だと考えたのです」

 

自律神経は呼吸や消化のほか、脈拍や血圧、体温調整など「生命維持」のために必要な機能を調整する働きをもち、その働きが悪くなれば全身に悪影響を及ぼす。

 

「そのため、頸性神経筋症候群になると全身に症状が現れます」

 

「女性自身」2020年3月10日号 掲載

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