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「国民の健康を守るべき医師が治療の目的を外れた使い方をすることは、医の倫理にも反する」

 

糖尿病治療薬「GLP-1受容体作動薬」がダイエットを目的として用いられていることについて、日本医師会がそう警鐘を鳴らしたのは6月17日のこと。いまだにインターネットで「GLP-1 ダイエット」と検索すると、同薬を“痩せる注射”とうたい、自由診療として提供している美容クリニックが複数ある。

 

この現状が抱える危険性について口を開いてくれたのは、関東圏内で薬剤師を務めるAさんだ。

 

「まず強調したいのは、保険適用で同薬を使用している糖尿病の患者さんは、変わらず使用を続けてほしいということ。しかし糖尿病でない人への同薬の使用は、日本では認められていません。ダイエットが目的の場合、適量を超えて使用してしまうおそれがあり、重篤な副作用に襲われることも考えられるのです」

 

ダイエット商品についての口コミサイト「ダイエットカフェ」には、「GLP-1ダイエット」に関する口コミが寄せられているという。同サイトの運営・管理人である福田尚広さんが語る。

 

「ネット上では’19年ごろから『食欲がわかなくなった!』と盛り上がりを見せていました。当サイトに寄せられた口コミ数は50件ほどですが、『フラフラした』『便秘と吐き気があった』と、副作用について書き込む人が多く見られます」

 

福田さんは’18年に、同サイトで「薬やサプリがダイエットにどれくらい効果があったのか」という統計を取っている。その統計では75.4%の薬・サプリが「効果はない」という結果だったと話す。

 

「副作用リスクを考えれば薬だけでのダイエットは難しいことを、利用者も感じているのでしょう。食事と運動を柱として、かかりつけ医との相談のうえで2つの柱のメニューを決めていくのが基本なのではないでしょうか」(福田さん)

 

ダイエットの柱のひとつである食事も、偏りすぎてしまうと落とし穴が……。過去に報告されたさまざまな食事法の“副作用”について、管理栄養士・博士(学術)の竹並恵里さんが解説する。

 

【納豆】落とし穴:生理不順

 

納豆は脂肪燃焼を高めるホルモン「アディポネクチン」を増やすといわれ、ダイエットに有効な食材であるとされている。だが、食べすぎは禁物だという。

 

「納豆に含まれる大豆イソフラボンは適量なら骨粗しょう症予防になりますが、“1日3食納豆”というふうに、長期で過剰摂取するとエストロゲン(=女性ホルモン)が低下し、月経周期が延びるなどの生理不順を起こしてしまう場合があります」

 

内閣府食品安全委員会が発表している「大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安量」は70〜75ミリグラムだ。

 

「これは納豆約2パック分に該当しますが、豆腐(100グラムで約20ミリグラム)や味噌汁(1杯で約5グラム)などからも大豆イソフラボンを摂取することを考えると、納豆は“1日1パック”ほどが適量といえます」

 

【バナナ】落とし穴:動脈硬化などの促進

 

「朝食に栄養価のあるバナナを取る『朝バナナダイエット』を実践している人も多いと思います。しかし、果物が含有する果糖は、肝臓内で脂肪の合成を促進する作用が強く、高脂血症を招きやすい成分です。食べすぎは、動脈硬化や老化などを促進してしまうおそれもあります」

 

1日に摂取すべき果物の目安は、「1日1種類がベスト」だという。

 

「バナナなら1本、りんごなら1/2個、みかんは2個くらいを目安にしましょう」

 

【鶏ささみ】落とし穴:貧血

 

「低脂肪高タンパクであり、ダイエットには欠かせない食品といわれていますが、牛肉などに比べるとミネラルが不足しています。体内の鉄分や亜鉛などが減ると、貧血のリスクがあります。健康のためには、赤身の肉や魚も一緒に取るようにしたいですね」

 

【ファスティング(断食)】落とし穴:免疫力の低下

 

「ダイエットというと“とりあえず食べなければよい”と考える人もいまだにいますが、これはNG。体の不純物を体外に出す“デトックス”を目標に行うだけであればいいかもしれませんが、これで体重を落としても、元の食生活に戻せばいずれリバウンドします。ファスティング自体が体温の低下や筋肉量の減少を招くため、免疫力の低下にもつながるのです」

 

さらに、食品に含まれる水分を摂取できなくなるため、熱中症リスクも高まるという。

 

「1日に必要な水分量は2.5リットル、うち1リットルは食事から摂取しています。食事量を減らすときには、2リットルは水を飲むべきでしょう」

 

竹並さんは「ダイエット中こそ『一品だけ食べる』という偏りをなくし、まんべんなく」と話す。

 

「食事のダイエットメニューを考えるときは、“一生その食事を続けられるかどうか”を考えてみてください。それを目安に、無理のない範囲で行えば、リバウンドも防げるはずです」

 

「女性自身」2020年9月1日 掲載

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