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「何日も排便がない状態や、便通があったのにまだ残便感がある、などの異変は大腸がダメージを受けている証拠。これは“大腸劣化”のわかりやすいサインです」

 

帝京平成大学の松井輝明教授はそう警鐘を鳴らす。便秘などによって腸内の悪玉菌が増加した状態を放置していると、腸内環境、特に大腸の劣化が進むという。大腸劣化は肌トラブルや肥満、さらには大腸がんや認知症などさまざまな病気のリスク要因になるというから注意が必要だ。

 

「私たちは体内で発生した有害な物質の70%を便として大腸から排泄しています。その排出が滞ると、有害物質がたまって腐敗が進み、悪玉菌がはびこります。そこから発生する毒ガスが大腸を徐々に劣化させ、劣化が進むと全身のトラブルにつながるのです」(松井先生・以下同)

 

大腸劣化を食い止めるためのキーワードが、近年注目を浴びている「短鎖脂肪酸」だ。これは、腸内の「善玉菌」が「食物繊維」をエサにすることで産生し、不足すると、大腸劣化を招く要因となってしまう。

 

「短鎖脂肪酸を体内で産生させるために大切なものの一つは食物繊維です。食物繊維のうち、海藻類や大豆・納豆などに含まれる『水溶性食物繊維』が腸内の善玉菌のエサになります。きのこ類やキャベツ、レタスなどに含まれる『不溶性食物繊維』は便のかさ増しをし、大腸を掃除してくれます」

 

食物繊維と並び重要なのが腸内の善玉菌。代表格として乳酸菌とビフィズス菌が挙げられる。

 

「乳酸菌は酸素に強く、主に小腸に生息します。いっぽうビフィズス菌は酸素があると生きられないため、大腸にしか生息しません」

 

大腸のためには、ビフィズス菌を積極的に摂取することを心がけたい。そのためには、“自分のおなかに棲んでいる常在菌と相性のよい菌が入っているヨーグルト”を食べることが効率的だという。

 

「実は、ヨーグルトならどれでもよいわけではありません。一人ひとりの大腸に生息する菌は千差万別。相性のよいビフィズス菌を毎日取ることを習慣化し、効率よく活性化させることが大切です。目安としては、2週間同じヨーグルトを食べ続けて、おなかの調子がよいという手応えが得られれば、そのヨーグルトは自分の大腸に合っていると考えることができます。それを食べることを習慣にすれば、体内で短鎖脂肪酸が不足することなく、大腸劣化の予防につながります」

 

また、ビフィズス菌の摂取は“食後、および就寝3時間前まで”がベストタイミングだそう。

 

自分の腸内細菌について詳しく知りたいのであれば、消化器内科などで検査をする方法もある。

 

「保険適応外なので1回約3万円の費用がかかりますが、腸内細菌がどのくらいあるかなど、健康にとって有用性の高いデータが得られるでしょう。腸内細菌は、善玉だけではなく悪玉も含めて多様性を持つほど体に有効な働きをすることがわかっています。偏食の人や病気がちな人は菌の数も少ないので要注意。多様性が重んじられるのは人間社会と似ていますね」

 

「女性自身」2020年11月24日号 掲載

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