カフェインの取りすぎにならないよう1日5gまでが目安(写真:アフロイメージマート) 画像を見る

「私たち日本人になじみ深い抹茶に、『うつ』の症状を軽減させる効果があることが、今回の研究で明らかになりました」

 

こう話すのは、熊本大学大学院生命科学研究部准教授の倉内祐樹先生。今年1月、倉内先生は文部科学省科学研究費助成事業として行った抹茶の効能に関する研究の成果を、オンライン科学誌『Nutrients』で発表した。

 

6年ほど前から抹茶と精神的なストレスとの関係について研究を始めたという倉内先生。今回の発表に際して着目したのは、「飲む人が、どのような精神状態のときに抹茶を飲むと、どのような効果があるのか」ということだった。特に着目したのが「うつ症状」との関係性について。

 

「世界中でもっとも患者数の多い精神疾患が『うつ』です。近年では、コロナ禍によって生じた『孤独』な状況が『うつ症状』を誘発するという危険性も指摘されています。私たちは『抹茶』を飲用することが『うつ症状』にどんな効果をもたらすのかを、マウスによって比較・実験しました」

 

実験では、まず「社会集団から隔離した際に現れる、強いうつ症状がある」マウスをAとした。水だけを飲んだ場合と、抹茶を飲んだ場合とで「無動状態の時間(秒)」(長いほど「うつ症状」が強いことを示す)を計測したところーー。

 

「水だけを飲んだ場合は『約150秒』であるのに対して、抹茶(体重1kgに対し抹茶100mmg)を与えた場合、『約75秒』と、『無動状態の時間』は半減しました。つまり、抹茶を摂取したことで『うつ症状』が『半減する』という傾向が見られたのです」

 

一方、平穏な精神状態のマウスBでも同様の実験を行った。こちらも、抹茶を取ることで、うつ症状が和らいだものの、水の場合の「50秒」から、抹茶を取った場合の「30秒」程度と、改善の度合いは小さかった。

 

「つまり、平常時よりも強いストレスがかかっている状態のほうが、抹茶が『うつ症状』を改善する度合いが大きいという結果が得られました」

 

さらに脳内神経の領域別に、抹茶が与える活性化の度合いについてもマウス実験を行い、そこでも抹茶が脳神経の活性化に効果をもたらしていることがわかったという。

 

「『うつ』の発症予防や、症状軽減には、さまざまなストレスに対処するセルフケアや心身の健康維持が重要。その方法の一つとして『抹茶』が有益に作用する可能性を、今回の研究で示すことができたと思っています」

 

ところで、お茶が「うつ状態」に与える影響に関する研究は、過去にも行われてきた。そのなかの一つでは、緑茶に含まれる「テアニン」や「カテキン」などの成分が「うつ病リスク」を軽減すると推測されている。この「テアニン」や「カテキン」は当然、抹茶にも含まれているのだが、成分ごとの効果については、倉内先生は「今後の研究課題です」と話す。

 

そのうえで、「緑茶」ではなく「抹茶」を選ぶ最大のメリットを次のように説く。

 

「緑茶は茶葉からお湯で抽出したものですが、抹茶は茶葉を細かく砕いた粉末で、茶葉そのもの。よって、テアニンやカテキンのほか、カフェインやアルギニンなどが、茶葉の成分バランスのまま混ざり合い、相乗効果につながると考えられるのです」

 

一方、抹茶にも取りすぎに注意しなければいけない「カフェイン」が含まれている。

 

「カフェインは過剰摂取によってストレスを悪化させる作用もあるとされています。抹茶に含まれるカテキン類がそれを抑制する役割を果たしますが、お子さんや妊婦さんは、お茶と同様、抹茶の飲用も控えるべきでしょう。それ以外の方も、抹茶は『1日2~3杯(計約5g)まで』を目安としてください」

 

「うつ症状の軽減」に大きな効果があることがわかった抹茶だが、「高価そう」とか、「お作法があるのでは?」とどこか敬遠しがちだった読者もいるかもしれない。そこで、自身も抹茶を愛飲するという倉内先生が、新生活や気候の変化からくる「春うつ」を軽減する抹茶の活用アイデアを教えてくれた。

 

「私は豆乳ラテに、ティースプーン半分程度の抹茶をトッピングするのがお気に入りです。ココアやプロテインドリンクに合わせてもおいしく飲めますよ。ブラックコーヒーに慣れている方は、『抹茶コーヒー』もお手軽に飲めるでしょう」

 

なんだか気分がすぐれないときは、抹茶ドリンクでリフレッシュしてみよう!

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