制汗剤を使いすぎると汗腺の機能が衰え、きついニオイに(写真:PIXTA) 画像を見る

夏本番を迎えると猛暑日が続き、ちょっと外に出るだけでも、汗が噴き出すようになった。

 

「通勤で毎朝、最寄りの駅に行くまでにびっしょりと汗をかくので一日が不快です。満員電車の中は、汗と香水、制汗剤がまざってすごいにおいが充満していますよ」

 

そうこぼすのは首都圏のオフィスに通う女性(50代)。マスクをつけなくなったので、自分の体臭が気になって仕方がないという。

 

「汗をにおいとして感じてしまうのは、皮膚の表面の作用で発生する、皮膚ガスが原因です。汗にはミネラル、ブドウ糖、アミノ酸、乳酸、尿素などさまざまな成分が微量に含まれていて、皮脂の成分もまざります。これが皮膚の常在菌の作用によって分解されると、体臭のもとになる皮膚ガスが発生するのです。夏の紫外線も大敵で、無臭のサラサラの汗をかいた後、放置すると嫌なにおいに変わってきますので、汗をかいた後のケアが大切になってきます」

 

そうアドバイスするのは、体臭のメカニズムに詳しい、東海大学理学部化学科の関根嘉香教授。

 

■皮膚ガス放散経路の違いでにおいも変わる

 

皮膚ガスが放散する経路は3通りあり、1つ目が常在菌の作用で皮膚表面から発生する「表面反応由来」。

 

たとえば、「夫の枕がくさい」と嘆く妻たちは多いだろうが、男性に見られる「ミドル脂臭」が原因。これは、汗に含まれる乳酸の代謝によって発生する「ジアセチル」と皮脂の成分がまざり合い、古びた油のようなにおいが主に後頭部から出てくるという。

 

男女ともに40~50代で目立ってくるのが「加齢臭」だ。

 

「年齢を重ねると皮脂が酸化されてできる成分の『2-ノネナール』が増え、枯れ草や古本に似たにおいがするようになります。主に頭部や耳の周辺、背中や胸、おなかなど体の中心部から出てきます。また、蒸れた足裏のにおいのもととなるのが『イソ吉草酸』で、これも常在菌の作用によるものです。2つ目は『汗腺由来』です。汗に含まれる『酢酸』が原因で、汗をかいたときに酸っぱいにおいがします。2つとも洗って落ちるのでにおい対策はしやすいでしょう。3つ目の『血液由来』は、血液中に流れている化学物質が揮発して、皮膚表面から染み出してくるもの。夏バテなどで疲労やストレスがたまりますと、血液中のアンモニア濃度が上昇し、皮膚から『疲労臭』がしみ出してきます。お酒を飲んだり、にんにくを食べたりした後に出るにおいも血液由来になり、これらは洗っても落ちません」(関根教授・以下同)

 

こうしたさまざまな要因をひっくるめて、“汗くさい”と感じるという。

 

においは、食生活や生活環境、遺伝による体質によって微妙に変わってくる。

 

特に、夏休みにはBBQやビアガーデンなどで、香辛料の強い肉料理やアルコールなどをたくさん取る機会が増えてくるので、汗をたくさんかいた後の“対策”を怠らないようにしたい。ところが、間違った対策でさらににおいを助長しているケースがあるという。

 

そこで関根教授に、夏本番にやりがちな汗対策のNG習慣を教えてもらった。

 

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