「頻尿薬」飲み続けると記憶障害の危険性も……50代以上の服用者が多い認知症高リスク処方薬
画像を見る よく処方される薬に注意(写真:*hanabiyori*/PIXTA)

 

■認知機能低下やせん妄を誘発する3つの薬

 

日本老年医学会などが発表した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、認知機能低下と強い因果関係が示された薬が3つあるとされている。

 

まず1つ目は「三環系抗うつ薬」。

 

「代表的な一般名はアミトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミンなどです。ガイドラインでは『可能な限り使用を控える』と呼び掛けていますが、古い薬で、長く使われている方もいらっしゃいます。やむをえず処方されているケースもあるので、副作用が心配な人は医師に相談してみましょう。現在はSSRIやSNRIといった新しい薬が中心になっています」

 

2つ目は「ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬」だ。

 

「睡眠薬のなかでは健康へのダメージが少ないといわれているため、もっとも多く処方されている薬です。しかもよく効くため、患者さんのなかには『これがないと寝られない』と、長期間続けている人も多いはずです」

 

ところがガイドラインでは可能な限り使用を控え、使用する場合は最低必要量で、できるだけ短期間にするよう促されている。

 

「しかし、患者が薬を求めれば、応じる医師が多いのが現状。患者の依存度が高く、睡眠薬を処方しない医師がいれば、患者は別の医療機関に行ってしまいます」

 

もっとも重要なのは眠れない原因を取り除くことだ。

 

「高齢者の場合は、日中の活動量が少ないことが、夜、眠れないことを引き起こすこともわかっていますが、根本に目を向けず、安易に薬に頼る人も多いのです」

 

認知機能低下リスクのある3つ目の薬が、「過活動膀胱治療薬」のオキシブチニン(薬品名ポラキス)。

 

「通常、膀胱に尿が約300mmリットルほどたまると尿意を感じます。しかし過活動膀胱によって膀胱が収縮してしまうと、膀胱に尿が十分にためられない状態で尿意を感じたり、排尿する回数が増えたりします。日本排尿機能学会の調査では、40歳以上の12・4%が過活動膀胱の症状があるという結果でした」

 

ガイドラインには、こうした頻尿薬のなかでも、オキシブチニンは可能な限り使用しないように記されている。

 

「現在はトビエース、ベオーバという薬が一般的で、オキシブチニンが処方されるケースは少ないと思います。ただ、現在、同薬を市販薬にしようとする議論もあります。泌尿器科に抵抗を感じる女性が、安易に服用してしまうことがないように、リスクを知っておくべきでしょう」

 

以上の薬を服用した場合、どのような“認知機能の低下”に注意を払うべきなのだろうか。

 

■急にこんな症状が出たら薬の影響を疑うべし

 

「認知症の初期症状と同じです。まず同じことを何回も言ったり、聞いてしまったり、忘れ物や探し物が多くなったりするなど、記憶障害があらわれやすいです。それが少し進むと、理解力や判断力の低下が出やすい。お金の計算ができなくなる、料理に手間取ってしまうなどの症状です。こうした症状が続くと自信を失い、怒りっぽくなったり、うつ症状に悩まされたりします」

 

ただでさえ、高齢になると肝機能や腎機能が落ちるため、薬の成分の代謝や排出に時間がかかり、薬が効きやすくなる傾向がある。

 

「だからこそ、薬は優先順位をつけて、最小限に抑えることが求められます」

その薬の飲み方にも注意が必要だという。

 

「お茶に含まれるカテキン、牛乳に含まれるカルシウムは薬効に影響するので、必ず薬は水かぬるま湯で飲むことです。また、水の量も100mmリットル以上が目安です。水が少ないと胃が荒れるリスクがありますし、表面がコーティングされておらず、ざらざらしている薬は喉に引っかかってしまいます。サプリなども薬との相性の悪いものがあるので、医師や薬剤師に相談してください」

 

最後に鈴木さんはこうアドバイスする。

 

「“認知症”の症状の原因が薬の副作用であれば、多くの場合で服用をやめることで、認知機能が改善します。副作用による認知機能低下の症状で、人生の集大成である晩年を過ごすことがないよう、今一度、薬について医師に相談してみましょう」

 

記憶のあいまいさが心配ならまずは薬の見直しを!

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