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「すでに兵庫県、大阪府、鹿児島県、滋賀県などでは自転車保険加入が義務化されています。背景にあるのは、自転車事故による損害賠償額が、場合によっては“超高額”になってしまうことなんです。とくに’13年に兵庫県で起きた事故は、自転車保険を意識させる大きな出来事だったと思います。当時小学5年生の少年が、夜間走行中、62歳女性に正面衝突。女性は頭蓋骨骨折の重傷で、一命は取り留めたものの、意識が戻らなかった。女性への損害賠償額は、9,521万円。子どもの起こした事故のため、監督責任のある母親に賠償命令が神戸地裁から下されました」

 

そう話すのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さん。埼玉県は今年10月、自転車保険への加入について、これまでの努力義務から義務に引き上げる条例を公布した。施行は来年4月からされる。同じく京都府でも、自転車保険の加入が義務化されることになった。挙げた賠償額は、現実離れした額に思えるかもしれない。しかし、自転車事故は、乗る人なら誰もが起こすリスクがあるのだ。

 

「朝、ぎりぎりまで子どもがぐずって保育園に急いで自転車を飛ばすママさんや、仕事帰りに夕飯の買い出しに追われる主婦でも加害者となりうるため、“まさか”に備える必要があるのです」(柏木さん)

 

では、自転車保険に入るまえに知っておくべきことは何だろうか。柏木さん、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに教えてもらった。

 

【ポイント1】「個人賠償責任保険」の重複加入に注意!

 

一般的に販売されている自転車保険とは、自身に対する「死亡保障」や「入院保障」と、事故を起こした場合に被害者への補償に充てる「個人賠償責任保険」という保険がパッケージ化されたもの。個人賠償責任保険については、“知らない間に加入していた”という人も多いのだ。

 

「クレジットカードに年間費数千円で付加しているので、加入している人も多いはずです。また、自身に覚えがなくても火災保険や自動車保険に組み込まれていたり、マンション住まいの場合は管理組合で各種保険に加入していることもあります」(柏木さん)

 

【ポイント2】月額数百円で加入できる商品が多数

 

具体的な保険商品について、風呂内さんはこう語る。

 

「『au損保:自転車向け保険 Bycle』は、『本人タイプ』、家族で入れる『家族タイプ』などのコースがあり、どのコースでも個人賠償責任の上限額が2億円以上という特徴があります。『本人タイプ』で個人賠償責任保険の上限額が最大2億円の商品は、月額360円です。また、『東京海上日動:ネットでeジョー「eサイクル保険」』は、条件次第で本人タイプ・個人賠償責任保険無制限が、月額170円という低価格に抑えられます」(風呂内さん)

 

【ポイント3】自転車そのものにかける保険も

 

2で挙げた商品のように、個人に保険をかけるのではなく、自転車そのものに保険をかけるものもある。それが、自転車店などで、自転車安全整備士による点検整備を経て受け取れる「TSマーク」だ。

 

「このマークには、1年更新型の賠償責任保障が組み込まれています。個人向けの商品との違いは、TSマーク付きの自転車に乗っていれば自転車保険に加入していない場合でも補償の対象になる点。マークには青色と赤色の2種類があり、それぞれ補償内容が異なります。相手側が死亡、重度後遺障害を残した場合の賠償責任補償の上限が、青色1,000万円、赤色は1億円です」(柏木さん)

 

【ポイント4】自転車の受け取りは自転車店で!

 

最近では、ネットで気軽に自転車を購入する人も多い。しかし、商品の受け取りは、あえて近所の自転車店で行ったほうがよいと柏木さん。

 

「店頭では安全上の注意や、条例のこと、自転車保険に関しての説明も、きっとしてくれるはずです。保険加入も含め、自転車事故への備えを考えるきっかけにしましょう」(柏木さん)

 

【ポイント5】保険金が下りないケースも

 

「当然のことながら、けんかや、嫌がらせなど故意による事故は対象外です。また、飲酒運転や『幼児2人同乗基準適合車』ではないのに子どもを同乗させるなどの“法令違反”を犯していた場合、保険金が支払われないことになるでしょう」(柏木さん)

 

ひとたび事故を起こせば、高額な賠償額を前に、“事故破産”にもなりかねない自転車事故。加入している人も、これから検討するという人も、まず相手を思いやった“安全運転”を心がけよう。

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