現在公開中のスタジオジブリ最新作『かぐや姫の物語』が大ヒット中!いま再び注目されている『竹取物語』は、平安時代初期に作られたという、多くの謎に満ち、恐ろしい背景を秘めた物語だった。『おとぎ話に隠された古代史の謎』(PHP研究所)の著者で歴史作家の関裕二さんに、謎を分析してもらった。
【1】辛口で有名な紫式部が『竹取物語』を絶賛していた!
「『源氏物語』の作者である紫式部は、藤原氏側が編纂した『日本書紀』を酷評する一方で、『竹取物語』を『物語の出で来はじめの祖』(=最初に生まれた物語)と絶賛しています。これには明確な理由があるんです。クライマックスで、かぐや姫を迎えに来た天人たちは『こんな汚れたところ(=平安の社会)に、どうして長くおられるのか?』とかぐや姫に聞いています。これは辛辣な社会批判が込められていて、権力者である藤原氏を糾弾しているのです」
【2】作者不明とされる理由は、バレては困る人がいたから
「作者は平安時代の歌人で『土佐日記』を著し『古今和歌集』の選者となった紀貫之という説が濃厚です。政権の中枢にいましたが、9世紀半ば、藤原氏ににらまれて没落。一族は藤原氏に深い恨みを持っていました。『日本書紀』や『続日本紀』などの歴史書は藤原氏の殺戮の歴史も正当化され、滅ぼされた者の声は封印された。その恨みつらみが、『竹取物語』を書かせたのでしょう」
【3】中国帰りの僧・空海の“体験談”という説がある!
京都の「竹取翁博物館」の小泉芳孝代表はこう言う。
「かぐや姫が言い寄る5人に与えた難題、あれを考え出せるのは、当時の国内の人間にはまず不可能だと思います。龍の頸の玉をリクエストされた大伴御行(おおとものみゆき)は、船で自ら頸の玉を取りに行くんですが、途中、嵐に遭うのが空海の体験と酷似しています。海外渡航経験が豊富な空海が、身をやつして描いたのではないかと考えられます」
【4】日本で最初のSF小説だった!
「竹取物語は、おとぎ話のように口づてで伝えられてきたものではなく、ちゃんと起承転結がついている小説です。言葉を繰り返して強調する文学的手法もこの作品が初めてかと。そのうえ、かぐや姫は一瞬にして姿を消したり、現れたりする。日本初のSF小説としても画期的な作品なのです」(小泉さん)
【5】「天の香具山」が、かぐや姫の名称の由来である
「『萬葉集』にある持統天皇の歌《春過ぎて夏来るらし白栲の衣乾したり天の香具山》は、奈良の天の香具山に、白い衣が干してあるという即物的な歌ですが、実は、7世紀末の持統天皇と藤原不比等による政変を予言したものだという説があります。天の羽衣は、王位継承のシンボルであり、その羽衣を干したと詠まれた山が、天の香具山。『かぐやま』と『かぐや』は似ているし、かぐや姫は天に帰る際、羽衣に身を包みます。紀氏ら滅ぼされた側の立場が明確に表れたネーミングに感じます」(関さん)